■“ゆとり”の支出を節約する結果、「余裕のない家計」に

慎重に商品を見極めて購入する人 ※画像/shutterstock

「家計の中身を10年前と比べると、食費の割合自体はほぼ変わっていません。人々は値上げの中でも工夫してやりくりを続けているのです。その代わりに減っているのが、交際費や小遣い、交通・通信費など“生活の彩り”に関わる出費。

 節約の矛先が“楽しみ”や“ゆとり”の部分に向かい、少しずつ『余裕のない家計』へと傾いているのがわかります」(生活情報サイトの編集者)

 その一方で、必要なものを見極めて選ぶ動きが広がっています。

「たとえば、安さだけでなく体に良いものを選んだり、無駄を減らして食を大切にしたりする工夫です。つまり、エンゲル係数の上昇は『生活防衛の結果』であると同時に、『暮らし方を見直す動き』でもあるのです」(前同)

 エンゲル係数が上がったからといって、日本がすぐに“貧しい国”になったわけではありませんが、数字の奥にある生活の実態を見つめながら、どうすれば安心して暮らせる社会を取り戻せるのか――。その問いに向き合うことこそが、これからの私たちに求められているのではないでしょうか。

トレンド現象ウォッチャー・戸田蒼
大手出版社でエンタメ誌やWEBメディアの編集長を経てフリー。雑誌&WEBライター、トレンド現象ウォッチャーとして活動中。