■応募条件は「日本が好きな方、中国が嫌いな方」問題となった企業の正体は?

 ユーザーのページを確認すると、この問題の求人を出していたのはD社(仮名)とあり、概要には《デジタルコンテンツ(動画等)の企画、制作、販売。広告宣伝に関する企画、制作
(You Tube運営、You Tube作成)》と記載されている。

 また、ユーザーページ情報によると、登録日は2023年6月19日で、所在地は東京都。これまでの募集実績は12月6日午後時点で263件、業務を受託したユーザーから投稿された評価は411件と、かなりの発注を行った様子が分かる。

 実際、「募集実績」のタブに移ると、同企業は5月と8月、昨年8月など、過去にも同様の求人を出している。

 5月の求人では、《【海外の反応(日本称賛、技術系、感動系、嫌中系)】の台本を作成していただくお仕事になります》と明記し、「中国批判」ではなく「嫌中」という表現を使用。

「依頼内容」には《中国や中国人の迷惑行為、モラルの欠如、その後、自業自得の結末となったり天罰が下ったりするフィクション動画。このようにフィクションもノンフィクションもあります》など、偽情報で動画を作ることも示唆されていた。

 また、昨年8月分の求人では、《海外の反応、調味深いネタ、鉄道、自動車、養殖などにおける日本の技術、スポーツ大会などにおける日本人選手やチームの活躍、中国・韓国批判、感動のストーリーなどを動画にしています》と、中国だけでなく韓国批判を行なうとの紹介まで。

 いずれの求人も、契約者が数名ずつ存在したことが募集ページ内で公開されていたが、12月5日午後時点では、すべてが「募集実績」の一覧から消されていた。

 各募集ページには参考動画としてYouTubeのURLが貼られており、リンクに飛ぶと、『輝く日本の技術【海外の反応】』『日本は世界の羨望』『感動JAPAN』といったチャンネルにたどり着く。

 あくまで参考動画としてなのか、D社が運営しているチャンネルなのかは不明だが、『輝く日本の技術【海外の反応】』の概要欄には、《当チャンネルの動画の情報は、必ずしも正しい情報とは限りません。正しい情報を取得したい方は、公式な報告書や信頼できるニュースソースを参照にすることをお勧め致します》と表記されている。

 しかし、クラウドワークスはガイドラインの禁止事項で、《非科学的・迷信・噂・憶測などを根拠としながら事実と誤認させるような、不確実な情報の発信や流布につながる依頼》と定めている。

 さらに、《特定の組織・職業・人物・商品・風習・文化・政治・国などのあらゆる対象に対し、事実誤認や印象操作などがおこなわれる恐れがあると判断できる依頼》も禁止としており、Xユーザーは“規約違反”の観点からも問題視したようだ。

 この募集をかけたD社について、社名やデジタルコンテンツ制作という業務、クラウドワークス上の登録日と法人番号指定年月日、東京という所在地などを基に調べると、港区や台東区などに、該当すると思しき同名企業が複数見つかった。

 しかし、法人番号などから調べても公開情報は住所しかなく、いずれの企業も代表者名やHP・電話番号など、問い合わせ可能な窓口は現時点では見つからなかった。