相撲界の内情や制度、騒動の行方を、元関脇・貴闘力が現場目線で読み解く。経験者だから語れる、大相撲のリアルが詰まったコラム。

 早いもので、今年も残りわずかになった。

 今年の大相撲界を振り返ると、昨年と明らかに変わったのは、幕内の土俵で、ガチンコの取り組みが増えたことだろう。

 九州場所は横綱・大の里のぶっちぎりの優勝かと思ったけど、13日目の安青錦戦で左肩を痛めて、千秋楽で、まさかの休場。

 NHK解説の舞の海なんか、「私だったら、ケガを隠してでも千秋楽の相撲を取りますよ!」なんて豪語していたけど、現役時代の舞の海ほど、いい加減な相撲を取っていたヤツはいない(笑)。

 大の里は、師匠の二所ノ関親方(元横綱・稀勢の里)の教えに従って、そもそもガチンコの力士だ。土俵上で情が湧いてしまうから、他の力士とは仲良くしないところも師匠と一緒だ。

 本気で戦っているからこそのケガだから、休場もしかたないんじゃないかな。

 今年は、大の里、豊昇龍と2人の新横綱が誕生したけれど、豊昇龍の一生懸命な相撲は、ファンの心に響いたのではないかと、オレは思う。

 豊昇龍は、叔父さんにあたる朝青龍の地位に追いつきたくて、横綱になる前は、かなり怪しげなこともしていた。

 だけど、今年春場所で横綱になってからは「改心」して、本気で相撲に取り組んでいる。千秋楽の安青錦との優勝決定戦で見せた、悔しさを振り絞ったような表情は、人間味が出ていた。根が素直な子なんだと思うよ。