■俳優・松本潤の今後に注目

 これまでの出演ドラマは、俺様キャラなど松本の個性を活かした、“ザ・松潤”な役柄が多かったが、本作ではそうした個性の押し出しは抑えられ、「受け」の演技に徹していた。それが毎回、事情を抱えた患者やその家族として登場する、ゲスト俳優たちを引き立てていた。

 ゆったり楽しみたいドラマだったが、第2話が選挙特番で休止。9月13日開幕の『東京2025 世界陸上』をTBSが放送する関係で全8話で終了など不運が続き、かなり食い足りない印象があったのは否めない。それが視聴率と配信の数字低下の一因となった可能性は高そうだ。

 また本作は徳重の患者への問診という、対話がベースの静かな物語。そこに、新米医師・滝野みずき(小芝風花/28)の成長というアクティブな要素が入れば、よりドラマは生き生きとしてきたはずだった。しかし、放送回が少ないためか、滝野の成長はあまり描かれず、全体的に地味な印象ばかりが強くなった。この2点がうまくいけば、数字も変わっていたかもしれない。

 とはいえ、円熟味を増した松本の演技は注目に値する。2026年の春にのラストコンサートツアーが予定されていることもあるのか、今のところ、次作の情報は出ていないが、今後の俳優としての活躍に期待したい。(ドラマライター・ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。