■「別のアーティストに変えるべきだったんじゃないかなと」元キー局プロデューサーは言う

 戦後80年目の『紅白歌合戦』――それなのにNHKがaespaの出場に踏み切ったことには、

《司会が広島出身の綾瀬はるかで、長崎出身の福山雅治が出場するのにこれで原爆キノコ雲ライト韓国人グループが出場したらただの茶番ですね》
《NHKは原爆で親類を亡くした広島出身の綾瀬はるかさんにaespaを紹介させるつもりか》
 《正直思うのだけど、福山雅治が長崎原爆を歌ったクスノキ歌うのに原爆揶揄したアーティストが何で紅白出るの?》

 といった、疑問を呈する声が多く寄せられている。

 元テレビ朝日プロデューサーの鎮目博道氏は、2025年が「戦後80年」の節目であることを踏まえて、NHKの対応をこう分析する。

「『紅白』は1年を振り返る番組、という側面もあります。つまり、“戦後80年の今年”を振り返ることになりますよね。そうなると番組的には、戦争や原爆のことを大きく扱ったり、あらためて視聴者の心に刻んでいくことが、“メッセージ”となってくるはず。

 それなのに、“なぜaespaの出場を強行するのか?”という疑問は出てしまいますよね。投稿に悪意はなかったんだとは思われますが……」(鎮目氏、以下同)

 2025年は「戦後80年」という節目の年。そんな重要な年に、原爆絡みの件で物議を醸している歌手を出場させることに疑問の声が出るのは、仕方がないだろう。

「世間から“どんな基準でキャスティングしてるんだよ”という声が出るのも当然ではありますよね。

 もちろん、隣国のアーティストを出演させること自体は、大切なことだと思います。最近の日中関係を巡る諸問題などもそうですが、近隣諸国と仲良くするのが難しくなりつつある時代だけに、そうしたアーティストの『紅白』起用は、意義のあることではあります。

 ですが、アーティストはたくさんいらっしゃるわけですから、わざわざ物議を醸したアーティストを起用せずとも、別の人をキャスティングすれば済むはずですよね。それなのに、なぜaespaの出場を強行するのか。NHKがその理由をきっちり説明できるのならいいと思いますが、そうでないならば常識的に考えて、別のアーティストに変えるべきだったんじゃないかなと思います」

 戦争や原爆についてあらためて考えることになりそうな戦後80年目の今回の『紅白』。疑問を感じながら『紅白』本番を見る視聴者は少なくないかもしれない――。

鎮目博道
テレビプロデューサー。92年テレビ朝日入社。社会部記者、スーパーJチャンネル、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。ABEMAのサービス立ち上げに参画。「AbemaPrime」初代プロデューサー。2019年独立。テレビ・動画制作、メディア評論など多方面で活動。著書に『アクセス、登録が劇的に増える!「動画制作」プロの仕掛け52』(日本実業出版社)『腐ったテレビに誰がした? 「中の人」による検証と考察』(光文社)