■印象深い新年の思い出

 相撲の世界でも、1月1日は慌ただしく過ぎます。部屋で新年会を開いて、師匠と一緒にお世話になっている方々への挨拶回りをして、1月2日から新年の稽古が始まって――。気づけば年末年始が、とうに過ぎていたなんてことがよくありました。両国国技館での初場所がありますからね。

 一方で嬉しいこともありました。新年の稽古を見に、長年、応援してくれるファンの方々が部屋に足を運んでくださり、直接、交流ができたことです。

 中でも印象深いのは、うちの親父(元大関・貴ノ花=花田満)の主治医を務めてくださった日本大学病院の先生です。

 その先生は箱根駅伝にも携わり、1月2日、午前8時のスタートのピストルを鳴らして、その足で部屋に来てくれました。もう亡くなられましたが、箱根駅伝を見るたびに、その姿を思い出し、自然と胸に温かな感傷がよみがえります。

 また、私が親方だったときは、若い力士たちに初詣に行ってこいと、よく言っていました。部屋があった中野新橋には『本郷氷川神社』があります。氷川神社のご祭神は、天照大御神の弟神で、八岐大蛇を退治した神話で知られる“素盞嗚尊(スサノオノミコト)”です。日本神話で重要な神様で、勝負の神様でもあるので、そういった学びのためにも、初詣には行ったほうがよいと思ったんです。そうでもしないと、若い子は部屋でゴロゴロしちゃいますからね。

 今は、夫婦で毎年、地元の氏神様に新年のご挨拶に行っています。