■元キー局Pが『ミリオネア』AIみのもんたさんに示す期待と懸念

 制作会社関係者は言う。

「2019年の『NHK紅白歌合戦』では美空ひばりさん(享年52)がAIで復活しましたが、亡くなってから30年後の試みでしたし、伝説の歌手の復活ということで賛否はありましたが注目を集めました。

 ただ、みのさんが亡くなったのは今年3月。そして、ご本人がAIで復活させてほしいという意向を遺して亡くなったわけではないでしょう。ご遺族の了承は得てはいるのでしょうが、テレビ界からも違和感を覚えるという声も上がっていますね」

 物議を醸しているAIみのさんについて、元テレビ朝日プロデューサーの鎮目博道氏はこう見る。

「『ミリオネア』のみのさんといえば、絶妙なためや間合い、目線で正解なのか不正解なのか、視聴者をひきつける名調子・職人芸が魅力の1つですが、AIがどこまであれを再現してくれているのかは個人的には気になります。良い感じに再現しているのであれば、視聴者の満足感は高いはずです。

 ただ、中途半端な形で“やっぱりAIだよな……”という仕上がりだと悲しいですよね。現在のAIのレベルでは、良いところまで再現してくれますが、本物まであと一歩ということも少なくありませんからね。

 美空ひばりさんのように歌う楽曲が事前に決まっているのでしたらガッチリ作り込めますが、クイズ番組ではその場での対応もある。その点にもケアできるのかも注目ではないでしょうか」(鎮目氏、以下同)

 物議を呼んでいるAIみのさんだが、『ミリオネア』の総合演出も《正直、みのさんにAIの姿でご出演いただくことはかなり悩みました。さまざまなご意見もあると思います》と告白しているが、

「不謹慎かと言えば、決してそうではないとも思えます。ご遺族にとっては、みのさんをAIで復活させて再び司会をすることは“喜ばしいこと、面白いことだから”というところもあるのかなとも思います。そうでないと許諾を出すことはないはずですからね。

 亡くなって間もないわけですが、良い形で復活させてくれるのであればご遺族が満足する可能性はあるのではないでしょうか。個人的には、この試みをポジティブにとらえています。故人に対する敬意があることが大前提ですが、ちょっとした目線や間合いなどの“みの節”を再現できていたら視聴者もAIを称えるのではと。

 一方で、AIの仕上がりがいまいちだった場合にも、“やっぱり本物には敵いませんでした”という演出が入れば、みのさんの評価は再び上がるのかなと。ただ、そういうふうにならない場合、故人の尊厳や名誉を傷つける懸念もありますよね」

 元日のゴールデンタイムに3時間半にわたって放送される『ミリオネア』。オンエア時には、“AIみのさん”が再び話題を呼ぶことになりそうだ。

鎮目博道
テレビプロデューサー。92年テレビ朝日入社。社会部記者、スーパーJチャンネル、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。ABEMAのサービス立ち上げに参画。「AbemaPrime」初代プロデューサー。2019年独立。テレビ・動画制作、メディア評論など多方面で活動。著書に『アクセス、登録が劇的に増える!「動画制作」プロの仕掛け52』(日本実業出版社)『腐ったテレビに誰がした? 「中の人」による検証と考察』(光文社)