■妻夫木聡・目黒蓮をもっと見たかった
一方で演者は、その物足りなさを補ってあまるほどの熱演を見せていた。妻夫木は毎回のように、栗須のさまざまな泣きシーンを見せて盛り上げた。もしこれがなければ、ドラマの薄さはさらにはっきり感じていただろう。
また、耕造の隠し子・耕一を演じた目黒蓮(28)も素晴らしかった。花瓶に水を入れる動作や、箱の中で横になったシュークリームを元に戻そうとする動作など、ちょっと不器用で雑に見え、それが父親の耕造(佐藤)譲りであること感じさせるのに、その耕造と対立するという難しい役どころ。セリフは少なかったが、所作や表情で耕一の感情をうまく伝える好演だった。彼らの演技を、もっとじっくり見たかったのだが……。
スタートからゴールまでしっかり見せるレースシーンは、確かに熱くなった。しかし、演技の深みと幅を着実に広げている妻夫木や、繊細な演技で実力派として成長している目黒の演技をじっくり楽しめる、日曜劇場ならではの人間ドラマに振っていれば、物足りなかった数字も変わったかもしれない。(ドラマライター・ヤマカワ)
■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。