■関西では関東と違った伝統文化が!

 さらに西へ目を向けると、関西地方では関東とは異なる寿司の伝統が息づいています。江戸前寿司が「握り」であるのに対し、大阪の箱寿司や奈良の柿の葉寿司といった「押し寿司」文化が主流です。これは、保存性を重視した昔ながらの食の知恵が今も受け継がれている証拠。祭りやハレの日に振る舞われる押し寿司は、家族や地域コミュニティで大切にされてきた文化的なシンボルでもあるのです。

 そして、2024年10月~25年9月の間に行われたスシローの売上皿数データによれば岡山県で『かに風サラダ軍艦』が突出した人気があるのも興味深いポイントです。ただ、こちらの理由は不明で「食の謎」だと言われています。

「寿司ネタの地域差は非常に興味深いデータです。東京の『アボカドサーモン』人気は、都市のグローバル化と観光産業の影響を如実に示しており、長野の『サラダ軍艦』は、その土地の歴史的な食糧事情と県民のアイデンティティが結びついた感動的な事例です。一方、岡山の『かに風サラダ軍艦』の謎めいた人気は、食の好みというものが必ずしも論理的な理由だけで形成されるわけではない、という人間の感性の奥深さを教えてくれます。こうした地域ごとの“当たり前”を深掘りすることで、その土地の人々が何を大切にし、どのように暮らしてきたのかが見えてきます。回転寿司チェーンの均一化されたシステムの中に見えるこうした多様性は、日本の食文化の豊かさを示しており、今後も注目していきたいテーマですね」(グルメサイト編集者)

 このように、回転寿司のメニュー表1つを覗くだけで、日本という国の多様な地域性が浮かび上がってきます。それぞれの地域が持つ食の記憶や歴史、そして現在のライフスタイルが、人気のネタランキングに反映されているのです。何気なく手に取る一皿の寿司ネタは、実はその土地に根ざした深い物語を秘めている、そう考えると、いつもの回転寿司が少し違った風景に見えてくるのではないでしょうか。

プロフィール
トレンド現象ウォッチャー・戸田蒼(とだあおい)
大手出版社でエンタメ誌やWEBメディアの編集長を経てフリー。雑誌&WEBライター、トレンド現象ウォッチャーとして活動中。