■「現在まで続ける意味が分からない」元キー局Pもバッサリ

 なぜずっと続いているかいまひとつ分からず、視聴者からも“もうやめてほしい”という声が上がる『紅白』の「けん玉チャレンジ」。元テレビ朝日プロデューサーの鎮目博道氏に見解を聞くと、「最初の1回目はともかく、現在まで続ける意味が分からない」と厳しい口調で指摘。さらにこう続ける。

「NHKとしては、毎年恒例の“お馴染みの企画”にしたくてやっているのでしょうが、多くの人はけん玉のギネス記録更新に興味はないだろうし、同チャレンジを求めている視聴者もそこまでいないと思います。想像で恐縮ですが、上層部が暴走して強行していて、止められないんじゃないかという感想さえ抱いてしまいます」(鎮目氏、以下同)

 また、鎮目氏はけん玉チャレンジは“成功”か“失敗”かの二択しかないことから、「どちらに転んでも驚きがないし、映像的にも弱い」と指摘。「同じ“みんなでチャレンジする”というコンセプトなら、ドミノなどのほうが絵的に面白いのでは」と言う。

「それこそ『紅白』は歌番組ですので、『ハモネプリーグ』(フジテレビ系)のようなアカペラ大会をやるとか、NHKらしくチャリティー関係の何かをするとか……何をやるにしても、そろそろ、けん玉以外の別のことを企画すべきです。いちテレビマンとしては、10年近くずっとけん玉企画をやり続けている姿勢は、怠慢的で努力不足では、と感じますね」

 さらに鎮目氏は、2023年の『紅白』のけん玉チャレンジに失敗した際、参加者が楽屋で土下座をしたというエピソードを振り返り、「時代に合っていない」とバッサリ。

 23年のけん玉チャレンジの失敗――当時のチャレンジには4年連続ギネス記録更新がかかっていて、1度は公式判定員から「ギネス認定」と判定された。ところが、VTR検証で“ゼッケン16番の男性”――けん玉YouTuberコンビ・もしかめブラザーズのしゅんが失敗していたことが明らかとなり、ギネス認定は取り消しに。

 三山らが彼を責めるようなことはなかったというが、しゅんは24年1月のニュースサイトの取材に対し、参加者たちへの申し訳なさから楽屋で参加者100人以上の前で土下座したことを告白。それを受けて、彼には同情する声が、NHKには“参加者が可哀相”など厳しい声が多く寄せられることとなった。

「テレビ離れが言われてる時代とはいえ、『紅白』は日本中の人が話題にする国民的番組。そこでのけん玉チャレンジで、“○○さんが原因で記録更新できなかった”みたいになってしまったら……。絶対に失敗できない状況を作るのは、歌番組なのに“なんで?”となるし、 “人を追い詰めてはいけない”という時代の空気からも逆行していますよね。

 それに、変な話ですが、そもそも見る側もそこまでの期待はしていないところもあります。つまり、けん玉チャレンジが成功して喜んでいるのは、番組を演出をしているNHKサイドだけとさえ言えそうだと。NHKの独りよがりさすら感じてしまいますから、さすがにそろそろ、何か違う企画を考えたほうがいいのではないかと思います」

 企画が続くなら来年、26年が10回目となる「けん玉チャレンジ」。評判は良いとは決して言えなそうだが、まだまだ続いていくのだろうか……。

鎮目博道
テレビプロデューサー。92年テレビ朝日入社。社会部記者、スーパーJチャンネル、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。ABEMAのサービス立ち上げに参画。「AbemaPrime」初代プロデューサー。2019年独立。テレビ・動画制作、メディア評論など多方面で活動。著書に『アクセス、登録が劇的に増える!「動画制作」プロの仕掛け52』(日本実業出版社)『腐ったテレビに誰がした? 「中の人」による検証と考察』(光文社)