■『おむすび』と『ヤンドク!』の違い

 元ヤンの天才医師という既視感ありまくりの設定が不安だったが、終わってみればいつもの、いや、いつも以上のハシカン劇場だった。笑って、怒って、泣いてと、橋本の演技の瞬発力は相変わらず強力。バタバタするだけでなく、13年前のバイク事故で並走していた親友の死など、シリアスなシーンも挟んできて、飽きることなく見られた。

 プロットは、ギャルから管理栄養士になった『おむすび』とほとんど変わらないのに、どうして『ヤンドク!』は違和感なく楽しめたのか? X上に《『おむすび』で失敗したのは、いやいやヤンキーになる役だったから》と指摘があるが、『おむすび』はもともとギャルじゃなかったのに比べ、『ヤンドク!』ははなからヤンキーだったという違いにあるのだろう。

 『おむすび』の場合、橋本演じるヒロイン・米田結がギャルに目覚めて以降は別として、望んでのギャルではなかったため、そのキャラに屈折があった。長丁場である朝ドラは、キャラに厚みを与えなければならないので、仕方ないと言えば仕方ないのだが。一方『ヤンドク!』は、湖音波は最初からヤンキーとして登場しており、迷いなく突き抜けているように見えた。それが、初回の楽しさにつながっているのかもしれない。

 脚本の野本ノンジ氏は、本当はこういうのをやりたかったのだろう。事故死した親友・堀田真理愛として、『おむすび』で栄養専門学校の友人役を演じた平祐奈(27)が出演するなど、座組からいっても、朝ドラ最低視聴率を記録した『おむすび』のリベンジといっていい。完全解放されたハシカンに注目だ。(ドラマライター・ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。