■アメリカではペットボトル1本が600円オーバー
大妻女子大学名誉教授で、“お茶博士”こと大森正司氏が言う。
「近年ではペットボトル飲料の原料である煎茶の生産から、市場価格が高い碾茶の生産へと移行する茶農家も増えています。結果として煎茶の生産量が減った。需給バランスが崩れ、価格が高価になったんです」
市場に生じた歪みが爆発したのは、昨秋のこと。
「静岡市場での煎茶の取引価格は1キロおよそ2000円となりました。一昨年は約350円でしたから、1年で6倍以上値上がった形です」(前出の松永氏)
今後も煎茶の市場価格が下がる見込みはないという。
「お茶は春先に採れる一番茶が最も高く、二番茶やペットボトル飲料の原料である秋冬番茶になると、価格が下がるのが相場です。
しかし今年は需給バランスが崩れたことで、秋冬番茶の価格が二番茶よりも高くなった。市場への秋冬番茶の供給量が増えないかぎり、今後も高値の傾向は続くでしょう」(JA静岡経済連茶業課の担当者)
大リーグのロサンゼルス・ドジャースに所属する大谷翔平が『お~いお茶』のアンバサダーを務める米国では、日本よりもはるかに高値でペットボトルのお茶が売買されているという。
「1本約4ドル(約630円)です。輸送コストがかかるとはいえ、高すぎます」(前出の経済部記者)
このままでは消費者の口に緑茶が届かなくなるのも時間の問題だと言うのは、前出の大森氏。
「煎茶の高騰が続けば、回転寿司チェーン店や大衆食堂において無料で提供されていた一杯のお茶もなくなることすら考えられます」
“いっぱい”お茶を飲める日常は、いつまで続くのだろうか。
大森正司(おおもり・まさし)
1942年生まれ。東京農業大学大学院農学研究科農芸化学専攻博士課程修了。その後、大妻女子大学講師、助教授、教授を経て、現在は大妻女子大学名誉教授。専門は食品科学、食品微生物学。