武田鉄矢が、心を動かされた一冊を取り上げ、“武田流解釈”をふんだんに交えながら書籍から得た知見や感動を語り下ろす。まるで魚を三枚におろすように、本質を丁寧にさばいていく。
日本在住のドイツ女性マライ・メントラインさんの著書『日本語再定義』(小学館)という本を題材に、武田流解釈をふんだんに交えて日本語について深堀りしております。今回は5回目。《#1はこちらから》《#2はこちらから》《#3はこちらから》《#4はこちらから》
今回は皆さんもときどき耳にする機会があるかもしれない、“ワンチャン”という流行語について考察していこうと思います。
【ワンチャン(名詞)】
「もしかしたら~」「ひょっとしたら~」といったニュアンスで使われる言葉ですが、マライさんはワンチャンを、こう定義しています。
ワンチャンとは二〇二〇年前後に日本社会に拡散したスラングだ。「ワンチャンス」の略である、用法としては「ワンチャンいけるっしょ」などが一般的といえる。(中略)「あわよくば」の場合、徹頭徹尾、実現可能性は低いものとして認識される。しかし「ワンチャンいけるっしょ」の場合、そこには「実現可能性は低い」ままながら「必勝」じみた意志が込められる傾向がある。言い換えれば「もし、すべてのプロセスでこちらの狙いどおりにコトが進めば」いけるっしょ、という感じだろうか (マライ・メントライン『日本語再定義』小学館)
マライさんはワンチャンの具体例として、「真珠湾攻撃」を例に挙げております。
海軍大将の山本五十六が考案した作戦。「訓練に訓練を重ねて練度を上げれば必ず成功する。いや、やらねばならん! やるしかない!」という、まさにワンチャンに賭けた作戦がハマって、成功した。
現代でもワンチャンに賭けた作戦が成功した例があります。
マライさんが挙げているのが、2014年にロシアのプーチンが仕掛けたクリミア併合。
ワンチャンに挑んだプーチンは、欧州がモタモタしている間にクリミアをロシアのものにした。その勢いで、ツーチャン目を狙ったのがウクライナ侵攻。
このウクライナ侵攻はもう間もなく4年、まさに泥沼です。
私は戦争に負けた国に戦後間もなく生まれたので分かりますが、戦争の傷って、本当に残るんですよね。傷が癒えるまで両国とも20年以上かかるんじゃないでしょうか。