■“ワンチャンの罠”とは

「ワンチャン」とはまさしく「ワン」であって、「ツー」とか「スリー」はない。ワンチャンの成功で味をしめてツーチャンを狙いにいくと、大きな敗北を背負うことになるというのが“ワンチャンの罠”なんですね。

 日本的にいえば、ワンチャンの後は必ず『平家物語』のオチになる。つまり“盛者必衰”の理です。

 これは私の直感ですが、そういう意味では“ワンチャン使い切った国”っていうのは、いくつかあるんじゃないだろうか。

 私はね、日本はまだワンチャンを使ってないような気がするんだ。

 なぜ、そう思うかというと、近頃話題のインバウンド。外国人観光客の急増。

 私世代が感じる最大の不思議は、こんな極東の端っこの国に外国から観光客がいっぱい来ているということです。

 今の若い人たちはピンと来ないかもしれないけど、我々のような団塊の世代に属している人間というのは“世界の田舎ニッポン”というのを体験しているわけです。だって、オレが中高生の頃、ヨーロッパの国の教科書では、日本のことを、どんなふうに紹介されていたか。

「日本人はお城に住んでいて、会社に行くときは忍者の格好をして行きます」

 そんなのが当たり前だった。特に当時、日本と交流が少ない東ヨーロッパの国なんていうのは、その程度の認識だった。

 かつて大作家の司馬遼太郎が日本に関して、はっきりと冷めた声で、こう言っておりました。

「この国は自転車操業なんだ。ペダルをこぐのをやめたら倒れるんだ」

 別段、資源を持ってるわけでもない、まったく余裕のない日本のような小っぽけな国が生きていくには、常にペダルをこいでないと、すぐに倒れてしまう。あたかもハツカネズミが回し車の中でグルグル回っているかのように、休む間もなく全力で走り続けているのが日本人だというんですね。

 そんな弱小国家の日本という国に、大挙して外国人が見物に訪れる。これは大きな“チャンス”です。