■日本の文化に世界が安らぎを感じている
彼らが一体、何を見物しようとしているのか、不思議ですよね。彼らはわざわざ遠い国の日本まで何かを探しに来ている。それが何なのか。
もったいぶらずに言わせてもらうと、彼らが探しているのは“弱い国”ではなかろうか。
今、世界を牛耳っているのは強い国。みんなもう、そういう強い国に疲れちゃったんでしょうね。
世界的には円安で経済的にも弱いし、政治的にも弱い日本。
でも、その日本に行ってみると、人々はすれ違うときにバウ(お辞儀)をするとか、何かをしてあげると必ず「ありがとう」を言うとか、道路を横断するときも横断歩道の手前で停まってる車に会釈するとか、そんな“ホッとする”文化が日本には山ほどある。
そういう日本の文化に世界中が安らぎを感じるようになった。
強い国っていうのは、いつも気を張ってないといけない。油断して怖い目に遭ったら、どんなことされるか分からない。
ところが、この国は落とし物をしても返ってくる。新幹線で忘れ物をしても99%戻ってくる。道端でも寝てられるし、電車の中でも平気で寝られる。そんな国は世界中どこを探してもない。
強面ではない弱い国・日本の弱くて優しい文化が、ちょっと居心地がよくて安らぎになっているのではないだろうか。
ある番組で、桜見物に上野の山を訪れたアメリカ人にインタビューしたときに、そのアメリカ人のおじさんが、こう言っておりました。
「散る桜ぐらい美しいものはない」
いかにも、しっかり造られたヨーロッパ式庭園よりも、自然を模したような日本庭園に咲く桜を求め、それも散り際の美しさを愛でるようになった。彼らは「弱いものは美しい」ということに気づきだした。
ある外国観光客が日本に来て「ものすごく感動した」と挙げていたのが夏場のあるシーンでした。日傘を差したご婦人が日傘を差していないご婦人と道で出会ったとき、さりげなく日傘を閉じて会話していた。つまり、同じ暑さの下で過ごす気遣い。日本人の習慣を支配しているのは論理とか科学じゃない。感性なんです。
そういう文化を維持している日本。散り際の桜を美しいと感じるように、日本文化が持つ“儚い美しさ”に魅力を感じる。弱い国のカルチャーに安らぎを感じる。そういう外国の方が確実に増えている気がします。
世界の大きな舞台から一番端っこの極東にある日本。その弱い国ニッポンが持ってる“弱い国の文化”が、今まさにワンチャンになりつつある。
「強い国ではなく、弱い国を目指そう」
これも私の直感ですが、世界の人々が日本という国が持っている“弱い文化”に目覚め始めると、強い国が牛耳ってる今の殺伐とした世の中とは違う世界ができてくるような気がします。
日本の弱くて儚くて優しい文化が世界を救うかもしれない。
さあ皆さん、日本のワンチャンに賭けましょうぜ!
ドイツ出身で、文芸評論に翻訳、コメンテーターなど、幅広く活躍するマライ・メントライ。彼女が日本語の構造や日本人の感性を論じた話題作。鋭い観察眼に、つい、ハッとして唸ってしまう。

武田鉄矢(たけだ・てつや)
1949年生まれ、福岡県出身。72年、フォークグループ『海援隊』でデビュー。翌年『母に捧げるバラード』が大ヒット。日本レコード大賞企画賞受賞。ドラマ『3年B組金八先生』(TBS系)など出演作多数。