日々、若者文化やトレンド事象を研究するトレンド現象ウォッチャーの戸田蒼氏が、本サイトで現代の時流を徹底解説。今、戸田氏が注目するのは、激減した「手書き」の機会について。

 スマートフォンやタブレットが生活のインフラとなった現代において、私たちの「書く」という行為は劇的な変容を遂げています。以前はペンを握り、紙に文字を刻むことが意思伝達の基本でしたが、今やフリック入力やキーボード操作が主流となりました。

 こうしたデジタル化の波は、私たちの脳に予期せぬ副作用をもたらしているのかもしれません。

 株式会社クロス・マーケティングが2025年6月に発表した調査結果によれば、20代から60代の幅広い層で「手書き」の機会が失われており、それに伴う「漢字忘却」の進行が浮き彫りとなっています。

 驚くべきことに、全回答者の約半数に迫る48.5%が「最近、漢字を思い出せないことが増えた」と回答。シニア層だけでなく、20代の若年層であっても3割以上が漢字を書けなくなっている実感を抱いており、日本人が長年育んできた「読み書きの素養」における危機の到来を予感させます。

 これはデジタルデバイスでの「変換」に頼る場面が増えたことで、文字を頭の中で再構成して出力する機会が減り、記憶の定着が妨げられている結果と言えるでしょう。

 NTTデータ経営研究所が2025年9月に行った大学生の読み書き実態調査では、現代の学生たちのリアルな姿が記録されています。

 講義の内容をノートに取る代わりにスマートフォンで撮影したり、配布されたデータをそのまま保存したりするスタイルが定着し、自らの手で「記録する」習慣が消失しつつあるというのです。もはや漢字を書けないことは個人の教養不足ではなく、「現代病」と言えるのではないでしょうか。