■“頭寒足熱”は理にかなっているが…

 一方で、Yの生活にも見習える点はあるという。

「下半身を温めるのは、とてもいいです。“頭寒足熱”は理にかなっています。冬は換気も重要で、暖房を節約するあまり換気をしなくなり、ハウスダストが溜まる人が多い。窓を開ける習慣自体は悪くありません」

 ただしーー

「全裸で寝るのは論外です。そんな人、いないでしょう(笑)。寝る時は衣類で空気の層を作ることが大切です。議論の余地はありません」

 筋肉が多いから寒さに強い、という説にも。

「筋肉が熱を生むのは事実ですが、“アスリートは寒さに強い”とは限りません。例えば相撲取りだって寒がるはずですから」

Tシャツ、短パンでくつろぐ男性
部屋では真冬でもTシャツが基本だというが…(画像/shutterstock)

 それでもYの生活には、意外な利点もあるという。

「外気と室内の温度差が小さいと、ヒートショックのリスクが減らせて、外出への心理的ハードルも下がります。この時期は暖房の効いた部屋にこもり、運動不足で糖尿病やコレステロール値が悪化する人が急増します。家にこもりがちな人にとっては、結果的に運動量が増える可能性もあります」

 結論は明快だ。

「彼は夏も冬も“慣れ”で乗り切ってきた特殊例。高血圧の人や、心筋梗塞・脳卒中の家系がある人は、絶対に真似しないでください」

 厳寒も暖房なしで過ごす男。安易に真似するには、かなりハードルが高い生き方だ。

上 昌広(かみ・まさひろ)
特定非営利活動法人「医療ガバナンス研究所」理事長。 1968年生まれ、兵庫県出身。東京大学医学部医学科を卒業し、同大学大学院医学系研究科修了。東京都立駒込病院血液内科医員、虎の門病院血液科医員、国立がんセンター中央病院薬物療法部医員として造血器悪性腫瘍の臨床研究に従事し、2016年3月まで東京大学医科学研究所特任教授を務める。内科医(専門は血液・腫瘍内科学)。2005年10月より東京大学医科学研究所先端医療社会コミュニケーションシステムを主宰し、医療ガバナンスを研究している。『日本の医療格差は9倍 医師不足の真実』(光文社新書)、『医療詐欺 「先端医療」と「新薬」は、まず疑うのが正しい』(講談社+α新書)、『病院は東京から破綻する 医師が「ゼロ」になる日』(朝日新聞出版)など著書多数。