■うまそうなウナギと開かないタレの袋…
腹立つよねぇ。目の前にうまそうなウナギがあるのに、タレの袋が開かないんだから。必死になって開けようとしたら、タレをばらまいちゃった。慌てて飛び散ったタレをふき取って、ちょっぴり残ったタレをかけた。それで、「さあ食べよう」としたら、山椒の入った小袋を見つけた。山椒ぐらいかけて食べたいなぁ、と思って、小っちゃい袋を開けようとしたら……開かないんだよ。
頭の中には山椒をかけたウナギをうまそうに食べている絵が浮かんでいるもんだから、なんとしても山椒をかけて食べたい。でも、開かない。どうやっても開かない。とうとう開かずに、山椒は諦めた。
目の前にあるのに開かないっていうのは、ひどいもんですよ。「開けられたくないほど大事なら売るな!」って言いたくなりますよね。この袋も改良の余地を残している。
コンビニのおにぎりの中には、袋を破く順番が示してあって、キレイに破いて食べられるおにぎりがある。ちょっと企業努力すれば、あれぐらいの技術革新はすぐにできるはずなんですよ。
これは、ある地方のコンサートで泊まったホテルでの出来事です。朝食を食べに宴会場へ行ったときのこと。ホテルのスタッフは結構いるのに、何から何まで全部、自動。紙ナプキンをもらうのもボタンを押してもらうことになってる。
一番嫌だったのがご飯。ご飯も自動で機械によそってもらう。100グラム、150グラム、200グラム、250グラム……とボタンがあって、受け口に茶碗を置いてボタンを押すと、ボタッと落ちてくるの、選んだ量のご飯が。
“ボタッ”っていうのは嫌だよね。口に入れるものを、出すときと同じように受け取るっていうのはさ、食事じゃねぇやな。入れるときと出すときは景色が違うほうがありがたいよねぇ。ご飯はやっぱり、よそったほうがおいしいもの。
この話をコンサート本番で言ったら、館内から、同世代のお客さんからウワーッと拍手が起こりました。その日のステージで一番ウケた話。
私、思うんだけど、産業技術にしろ、接客サービスにしろ、お尻を叩いて、より優れた商品やサービスを提供するには、年寄りの不平不満、あるいは悲鳴、あるいは怒りの声が必要だと思うんですよね。
世の中が正しい方向に発展、進化しているということを確認するために、老人が必要だと私は思うんです。
そういう意味で、老人たちっていうのは、不平不満を並べていいという特権を持ってるんじゃないかなぁ。むしろ、たとえ隠居がかなわない、この時代であっても、いろいろと文句を垂れる必要がある。
どうか、ご同輩諸兄、死ぬまで元気に働いて、世の中にどんどん物申していきましょうや!
ドイツ出身で、文芸評論に翻訳、コメンテーターなど、幅広く活躍するマライ・メントライ。彼女が日本語の構造や日本人の感性を論じた話題作。鋭い観察眼に、つい、ハッとして唸ってしまう。

武田鉄矢(たけだ・てつや)
1949年生まれ、福岡県出身。72年、フォークグループ『海援隊』でデビュー。翌年『母に捧げるバラード』が大ヒット。日本レコード大賞企画賞受賞。ドラマ『3年B組金八先生』(TBS系)など出演作多数。