■正解のない無理ゲーを強いられている気分

 こうした意識の断絶は、最新のデータでも浮き彫りになっています。

 SHE株式会社が2025年9月に発表した調査によれば、職場での絵文字利用について「賛成」とする声が42%に対し、「反対(好ましくない)」とする回答が58%に達しました。実態・評価の両面で、オフィス内の賛否は見事に二極化しています。

 さらに、30〜50代の女性の半数以上が「絵文字や句点など、表現に気を使いすぎて疲れたことがある」と回答。世代の中心を担う働き盛り層ほど、デジタル上のマナーに翻弄され、精神的な負担を感じている実態が浮き彫りとなりました。

 ネット上の声を拾ってみると、現場のピリついた空気感が如実に伝わってきます。

《上司から『明日もよろしく』の後に両手で拝むマークがあると“絶対休むなよ”という圧を感じて胃が痛くなる》
《不自然なタイミングで爆発する絵文字のせいで、文章が読みづらくて仕方ない》

 といった、過剰なデコレーションへの不満が噴出。その一方で、送る側の中間管理職からは、

《無機質な短文だと怒っていると思われるし、絵文字を使えばハラスメント。もはや正解のない無理ゲーを強いられている気分》

 という、“コミュニケーションの迷路”で立ち往生する悲鳴も聞かれます。

「エモハラが議論される根底には、世代による記号の使い方の違いがあります。年配層にとって絵文字は文章を柔らかくする“緩衝材”ですが、若者にとっては文字以上に本音が漏れ出る“顔色”そのもの。良かれと思った一文字が、土足で相手の心に踏み込む無礼さと取られかねません。不快に感じた側がハラスメントだと主張すれば、今の社会では無視できない重みを持ちます。ただ、相手がどういうつもりで打ったのかを考える余裕を失うと、職場はただお互いの粗探しをするだけのギスギスした場所になってしまう。送る側も絵文字でごまかす前に、まずはしっかりとした言葉で向き合う勇気が必要なのではないでしょうか」(産業カウンセラー)

 誰もが加害者にも被害者にもなり得る時代。スマホの絵文字に頼らずに通じ合える信頼を積み重ねたいものです。

戸田蒼(とだ・あおい)
トレンド現象ウォッチャー。
大手出版社でエンタメ誌やWEBメディアの編集長を経てフリー。雑誌&WEBライター、トレンド現象ウォッチャーとして活動中。