阪神タイガースのレジェンド、“ナニワの春団治”こと川藤幸三が猛虎愛を語り尽くす熱血コラム。OB目線の激励から時には喝も……熱き魂が炸裂する!
プロ野球の春季キャンプちゅうたら、30を過ぎたベテランはまず体を絞ることに重点を置く。ランニングやらで体を動かし、長いシーズンを見据えたコンディション調整を主にするわけや。そして中盤から本格的な練習に入っていく。
しかし1986年、つまりタイガースが日本一になった翌年のワシの立場は、そんな悠長なことを言ってはおられん状況やった。前年のオフに「戦力外」の烙印を押され、監督にもフロントにも肩たたきされとったからな。それに逆らってチームに残らせてもらったわけで、何が何でも結果を残すしかなかった。
とはいえ、キャンプで目の色変えて、ガンガン飛ばしたかてしゃあない。勝負はキャンプの状態やなく、オープン戦での働きや。
だいたいキャンプ・イン当初からガンガン、すごい打球を飛ばすことは難しいことやない。ベテランはシーズン開幕に仕上がりのピークを合わせとるから、キャンプは案外のんびりムードや。そんな中でフルスイングでボールを引っぱたけば目立つのは当たり前。そいうことをするのはルーキーや新外国人や。
ワシはマイペースを貫いた。いいとこ見せようと思って張り切れば、それだけパンクするリスクも高まる。しかも、ワシはこれ見よがしに練習するのが嫌いやった。人前では「ぐうたら川藤」を決め込み、人が見てないところで、誰よりもバットを振り込んだ。