■匿名アカウントでも家宅捜索を受けた事例が

 こうした状況について、ネット社会における言葉の価値は、厳罰化以前とは決定的に異なってきている。

「例えば、特定の個人に対し“バカ”や“キモい”、あるいは“クズ”といった抽象的な罵倒を投げかける行為は侮辱罪として立派に成立します。2026年の今日においては、発信者情報開示の手続きがスムーズになった影響もあり、匿名アカウントであっても投稿者が特定され、警察から家宅捜索を受けた事例が珍しくありません。

 特に40代から50代の層は、適切なリテラシー教育を受けないままネットデビューしているケースが多く、日常の不満を書き込む感覚で加害者になりやすい傾向にあります。画面の向こう側にいる相手の人生を想像できないまま放たれるひと言が、最終的に自分自身の生活を破壊する凶器になるという認識を、社会全体で共有しなければならない局面に来ているのは間違いありません」(生活情報サイト編集者)

 警察庁の報告によれば、侮辱罪の認知件数は厳罰化された2022年の267件から、2024年には393件へと大幅に増加しており、そのうちネットを利用したものは約57%を占めています。実際の事例集では、SNSに「被害妄想狂」と掲載して罰金10万円、掲示板に「マジでデブだしきもいね」と投稿して罰金10万円など、生々しい処罰内容が並んでいます。

 さらに、店舗の口コミ欄に「最低です」と4回投稿したケースでは罰金20万円が科されるなど、企業に対する攻撃も厳しく裁かれるようになっています。自分では一過性の怒りによるものだと考えていても、ネット上に書いた言葉は「公然」の要件を満たし、渋谷のスクランブル交差点の大型ビジョンに掲示しているのと同じ状況を生み出します。誰もが見られる場所に攻撃的な言葉を刻む行為の重さを、送信ボタンを押す直前に今一度、自問自答すべき時期ではないでしょうか。

戸田蒼(とだ・あおい)
トレンド現象ウォッチャー。
大手出版社でエンタメ誌やWEBメディアの編集長を経てフリー。雑誌&WEBライター、トレンド現象ウォッチャーとして活動中。