武田鉄矢が、心を動かされた一冊を取り上げ、“武田流解釈”をふんだんに交えながら書籍から得た知見や感動を語り下ろす。まるで魚を三枚におろすように、本質を丁寧にさばいていく。
今回の題材とさせていただくのは、『バルセロナで豆腐屋になった~定年後の「一身二生」奮闘記』(岩波新書・清水建宇著)。
日本人がバルセロナで豆腐屋を始める。なんとも興味深いですね。
サブタイトルの「定年後の一身二生」ですが、「一身二生(いっしんにしょう)」というのは、“一つの身体でありながら人生を二つ分、生きました”という意味。
この言葉の主は福沢諭吉です。江戸の末期に生まれ、徳川時代と文明開化の明治時代を生きた。そんな体験から出た、“一身にして二生を経(ふ)る”。
皆さんの中にも、「定年後の暮らしをどうしようか?」と思い悩む人が多くいらっしゃることでしょう。そんな人の一つの指針にもなるのではないかと思い、今回、この本をセレクトしました。
例によって武田節全開で語ってまいりますので、乞うご期待!
タイトルをパッと見て頭の中に浮かんだのが“カルメンがざる持って「二丁ちょうだい!」って豆腐を買いに来る”っていう画です(笑)。
バルセロナで豆腐屋やって食っていけるのか……? というストレートな疑問が浮かんでくる。
もう一つは、近頃、盛んに取り上げられている“ジャパンファースト”の一件。日本に限らず、世界の動きは今“自国民ファースト”の時代であって、流れ込んできた外国人に対しては、いささか冷ややかな時代。
そんなご時世で(豆腐屋開店は今から15年ほど前の話)、スペインに行って豆腐屋やるって、自国民ファーストの反対をいくわけでしょ。とてもバルセロナという異国の地で、日本人が営む豆腐屋がスペイン人に大事にされるとは思えない。
そう考えてみると、スペインで豆腐屋をやるっていうのは大冒険ではないだろうか。