■半グレを返り討ちに引退後も“最強関脇”
――角界に話を戻すと、元大関・魁皇は握力が測定不能だったという都市伝説もありますが、怪力も強さの要因になり得ますか?
貴乃花:いえ。相撲は足の裏から頭のてっぺんまでを使わないといけないから、単に腕の力が強いだけではダメです。けど、魁皇さんは確かに強かったですね。あと、うちの親父が強かったと言っていたのは、北の湖さん(第55代横綱)と輪島さん(第54代横綱)。
板垣:北の富士さん(第52代横綱)が解説をしていたときに、ふと、栃木山(第27代横綱)が強かったと、ボソッと言ったんですよ。
貴乃花:栃木山さんは現役時代もそうですし、引退してからもすごかった。
板垣:引退後に全日本力士選士権で優勝しましたからね。本当に強かったんだな。
――引退直後の1925年、「第1回明治神宮例祭奉祝 全日本力士選士権大会」に年寄・春日野として出場し、現役横綱たちを破り、優勝。引退から6年後となる31年「第1回大日本相撲選士権」にも参加すると、現役の三役らを退け、またもや優勝を果たしました。
貴乃花:それで言うと、琴錦さん(元関脇、現・朝日山親方)も強かったですよ。体は小さいんですけど、私が吹っ飛ばされましたもん。
板垣:大関ですらないのに2回も優勝していましたよね。最強の関脇と言われていた。
貴乃花:琴錦さんは、引退後は体も痩せて、世間の人には気づかれない、普通のおじさんになっていたんですけど、とある駅で半グレ5〜6人からカツアゲにあったそうなんですよ。それを、なんと返り討ちにした。
板垣:怖え!
貴乃花:半グレが泣きながら土下座したそうですからね。
板垣:殺されると思ったんでしょうね。
貴乃花:強い人って、そんなもんですよね。俺は強いぞって、ふんぞり返らない。
板垣:貴乃花さんなら、どうしますか? もし半グレに囲まれたら?
貴乃花:私は、1円玉を差し出して、これで満足してくれって言います(笑)。
板垣:それじゃあ、ケンカを売っちゃってるよ(笑)。
貴乃花:大関や横綱になれなかった人の中にも最強がたくさんいたんですよ。それは、世間も一緒で、本当の実力者は姿を見せませんから。
板垣:いや、でも……。男なら強いと思われたいな。
貴乃花:いえいえ。先生は十分、お強いですから。
板垣:横綱に、それを言われたら、逆らえません(笑)。
貴乃花光司(たかのはな・こうじ)
1972年8月12日、東京都生まれ。88年、藤島部屋に入門。92年の初場所で、史上最年少の19歳5か月で幕内初優勝。兄・若乃花と「若貴フィーバー」を巻き起こす。94年11月に第65代横綱に昇進。幕内優勝22回。生涯戦歴は794勝で、「平成の大横綱」と呼ばれた。2018年に日本相撲協会を退職し、現在はテレビ、講演会等、幅広く活躍中。
板垣恵介(いたがき・けいすけ)
1957年4月4日、北海道生まれ。20歳で陸上自衛隊に入隊。習志野第1空挺団に約5年間所属し、アマチュアボクシングで国体にも出場した。『週刊少年チャンピオン』(秋田書店)で91年より連載中の人気格闘漫画『刃牙』シリーズは累計発行部数1億部を突破。現在、シリーズ第6部となる『刃牙らへん』を連載中。