■デメリットだけじゃない、中学受験のメリットとは
しかし、見事に名門中学合格を勝ち取って、充実した中学校生活を送る子供たちがいるのも事実。この違いとはどこにあるのか――。
「パーソナリティの違いですね。中学受験に“向いている子”の多くは、尊敬されることが好きで我慢がきく子。このタイプの子供は、自尊心の高さゆえに頑張り屋さんで、学校のブランド力を自分のものにしようと努力ができます。“向いていない子は反対に、尊敬されることに価値を見いださないタイプなんですよね」
“向いている子”にとっては、実は中学受験をすることのメリットが、ただ名門といわれる学校に入ること以上にあるのだそうだ。
「最大の利点は、中高の6年間を受験で我慢することなく、やりたいことに取り組めること。中学生の時期から高校生と一緒に活動できることから、スポーツに励んだり、理系の才能を伸ばしたりすることができます」
また、この時期の「成功体験」は今後の人生に強く生きていくことは間違いない。
「中学受験は独特の文化です。この時期に褒められたり評価されたりする経験は自己肯定感につながり、学校を卒業してからも次の“ブランド”を求めてキャリアを歩むイメージがつきやすくなります」
どちらに進むかはその子次第。親はただ隣で見守ることが大事だと、杉山氏は言う。
「中学受験は、子供にとって大きな経験であると同時に、一つの“博打”みたいなものです。親御さんの立場なら、自分が行かせたいのか、それとも子供が行きたいのかを見つめ直す必要があります。もし、“周りが受験しているから”とか、“自分の夢を託したいから”という理由で受験をさせようと思っているのなら、それは避けるべきでしょう。
とはいえ、地元の中学校が荒れているからなど受験をする理由は家庭によってさまざま。お子さんと話し合って、納得の上で進めていくのがベストです」
もし子供の受験に迷いがあるのなら、それは何かしらの懸念があるということ。受験がもたらす恩恵と、反対に負うかもしれない傷について、今一度考えてみてほしい。
杉山 崇(すぎやま・たかし)
心理学者。臨床心理士。神奈川大学人間科学部・大学院人間科学研究科教授。心理相談センター所長。公益社団法人日本心理学会代議員。
子育て支援、障害児教育、犯罪者矯正、職場のメンタルヘルスなど、さまざまな心理系の職域を経験。心理学と脳科学を融合した次世代型の心理療法を目指す。心理療法家としても科学的心理学研究者としても、国から指導者レベルの評価を受けている心理学者。2児の子育て中。主な著書に『読むだけで人づきあいが上手くなる。』(サンマーク出版)、『「どうせうまくいかない」が「なんだかうまくいきそう」に変わる本』(永岡書店)、『心理学者・脳科学者が子育てでしていること、していないこと』(主婦の友社)、『精神科医が教えないプチ強迫性障害という「幸せ」』(双葉社)など。