■高価格化に消費者の本音は
また、ハンバーガー業界に新たなトレンドが生まれたことで、消費者も高価格バーガーの購入への抵抗感が薄れているという。
「すでに日本では、1つ1500円以上するグルメバーガーが定着しています。いい肉、いいバンズを使った美味しいバーガーを食べている人にとっては、1000円程度ならむしろお得感があるのでは」(前出の岩崎氏)
事実、国内で24店舗を展開する神戸発祥の『BRISK STAND』は今春ドバイに進出予定だし、国内で19店舗を展開する富山発祥の『SHOGUN BURGER』も現在、中国とタイに計4店舗を構えている。両店の目玉商品は2000円超のハンバーガーだ。これらの動きからもグルメバーガーのチェーン店化が業界内で進んでいるのは明らかである。
「マクドナルドが使う原材料、油、資材も環境や健康を考慮するなど改善していますし、高級路線は新規顧客の獲得にも繋がり、売上にもかなり貢献しています」(前同)
現に、日本マクドナルドホールディングスは、26年12月期の連結純利益が前期比2%増の345億円になる見通しだと2月6日に発表した。達成すれば、3年連続での最高益となる。物価高の最中でも同社は、2025年の1~12月の間に客単価を1.7%上昇させている。高価格メニューの投入で客単価を押し上げ、利益率を上げたかたちと言えるだろう。
「日本マクドナルドは、昔から時間帯別メニューの提案をきめ細かく設定し、リピーターと新規顧客を掴んできました。そのマーケティング力は、世界中のマクドナルドの中で群を抜いています。また、セルフ式端末の導入などによって人件費を減らしつつも、コロナ禍以降、従業員の接客強化に力を入れています」(同)
マクドナルドでは1000店舗以上でタッチパネル式の注文システムを導入。また、既存店舗のリニューアルも進めている。
「飲食業にとって快適で清潔な店内環境は最も重要で、同社は27年度までに1000店舗近くのリニューアルを予定しています。過去最高益を叩き出した今、とても正しい投資だと言えるでしょう」(同)
ただ、高価格帯に踏み切ったことで今後客離れが起きる可能性も考えられる。この価格変化には、
《今でさえ高いのに、これ以上高くなったら利用しづらい》
《そもそもマックに高い商品なんて求めてない》
《マックが値上げ? もう行かない!》
と、嘆く声も少なくない。
岩崎氏は、ファストフード業界の高価格帯への路線変更はこれまであまりうまくいった例がないと言う。しかし、物価高が続く昨今の市場の影響によりその状況にも変化が起きているというのだ。
「高級化が成功するひとつのポイントが、メニュー数の多さです。少ないメニューの中で商品の値上げをしたり、高級商品を投入すると悪目立ちします。ですが、バラエティに富んだメニュー設定の中で、一部が高級化しても目立ちにくい。マクドナルドはメニュー数も豊富ですし、高価格メニューと低価格メニューの両輪を意識して品ぞろえをしていますので、客離れは起きないと思います。一方で、低価格メニューを一律で値上げするようなことがあれば、主要な客層であるファミリー層が離れる可能性もあります」
かつての“デフレの王者”は、インフレ局面でも強さを発揮できるのか。
岩崎剛幸(いわさき・たけゆき)
流通小売・サービス業界のコンサルティングのスペシャリスト。「面白い会社をつくる」をコンセプトに各業界でNo.1の成長率を誇る新業態店や専門店を数多く輩出させている。街歩きと店舗視察による消費トレンド分析と予測に定評があり、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌でのコメンテーターとしての出演も数多い。「情がトップコンサルタントへの近道」と語る。著書多数。