投手が到底当てられそうもない変化球で屈強な打者を手玉に取る光景は、まさに野球の華。今回は、そんな“魔球”の中からスライダーやフォークを大特集する。

 少し前まではなじみのなかった、変化量の大きい“スイーパー”も、今季の完全復活も待ち遠しい投手・大谷翔平(31)のおかげで、今やすっかり浸透した。

 だが、“魔球”と呼べるほどのスライダーは、やはり伊藤智仁、一択だろう。

「胸が打者のほうに向いているのに、まだ腕が出てこない投げ方は、当時のトレーナーいわく“驚異的な肩甲骨周りの可動域の広さ”ゆえ。肩関節が柔らかいからこその魔球で、だからこそ、ケガで苦しんだと言えます」(スポーツ紙デスク)

 若きヤクルト時代に、その球を受けた元捕手の野口寿浩氏も「あれ以上の球はない」と断言する。

「右打者の背中を通りそうな球筋から、壁に当たってはね返ってきたかのような勢いで曲がってアウトローに決まる。あれは別格。僕も慣れるまでは、捕るのに苦労しました」

 その野口氏は、日ハム在籍時に、今も鮮烈な印象を残す松坂大輔のあのデビュー戦でも打席に立っている。

「“消えた”と感じた投手は何人かいるが、あの日の松坂のスライダーも、まさにそんな感じ。スピードとキレが異次元でした。片岡篤史さんの三振シーンが有名ですが、初打席は僕もかすりもせず三振でした」

 そんな松坂もいた西武では、今季からアストロズでプレーする今井達也(27)のスライダーが抜群だ。

 数種を投げ分ける中でも、タテの“ナックルスライダー”は、「達人の域」と評するのは、プロ野球のデータ解析を手がけるジャパンベースボールデータの宮下博志氏だ。

「球種別の奪三振数でも今井が堂々トップ。曲がり幅の大きいヨコ変化のスライダーで2位につける宮城大弥(24)も、これまたタイプの違う達人級です」

 同じ西武では、今季の新守護神と期待されるウィンゲンター(31)も、名うてのスライダー投手。

「全投球の約40%がスライダーで、空振り率も50%を超えている。ここまで偏った投手は、今のNPBには稀有な存在。イメージ的には、右の岩瀬仁紀さんが近いでしょうか」(前同)