■初めて目の当たりにする豆腐づくり

 修業といっても、店主の豆腐づくりを見学して学ぶだけ。その修業が3か月ほどたった頃、店主から「別の豆腐作りも知っておいたほうがいいでしょう」と紹介されたのが、同じ習志野市内の小さな商店街の入り口にある三河屋豆腐店。師匠は鈴木光男さんという、その道50年の大ベテラン。

 三河屋豆腐店での修行の様子が本書には、こう描かれております。

 

  自転車をこいで午前五時に三河屋に着くと、鈴木さんはすでに忙しく働いている。絹豆腐用の濃い豆乳はもうできていて、常連客が買いに来ている。この濃い豆乳で絹豆腐をつくるのが、いつもの修業の始まりだった。 (清水建宇.『バルセロナで豆腐屋になった――定年後の「一身二生」奮闘記』. 岩波新書, 2025, p.22-24)

 

 さあ、いきますよ。ここからは豆腐づくりの手順を、ちょっと長くなりますが、紹介しましょう。

 絹豆腐の型箱を2つ置く。この一つで40丁の豆腐ができる。この箱型の中に凝固剤の粉末を入れて水で溶く。そこに豆乳を勢いよく注ぎ込む、“流し込み”という作業を行う。豆腐を凝固させることを、関東の豆腐屋は「寄せる」というそうです。

 20分ほどで寄せが終わると、箱型の絹豆腐をカッターで8本に切って、箱型ごと水槽に沈める。そして箱型を持ち上げると、カッターで切れ目を入れた絹豆腐が水槽に放たれる。これが皆さんも豆腐屋の店先で見たことがあるでしょう、プールみたいな水槽に入ってる絹豆腐ですね。

 次は木綿豆腐にいきましょう。一晩、水に漬けた大豆に水を加えながら、豆すり機ですり潰してドロドロにする。このドロドロにした「呉(ご)」と呼ばれるものを圧力釜に移して煮る。煮えたら絞り機にかけて豆乳とオカラに分離。その豆乳を大桶に移して、木の櫂でゆっくりかき混ぜたあと、「ワンツー」と呼ばれる道具で、さらにかき混ぜる。

 この「ワンツー」なる道具ですが、直径50センチぐらいのステンレス製の丸い円盤に、たくさんの穴が空いていて、その脇に二本の腕木がついてる。この二本の腕木を持って円盤を上下に動かして豆乳をかき混ぜる。このリズムが「ワンツー」だそうで、穴から逆流することで一気にかき混ぜることができるそうであります。通常は水に溶いた凝固剤を入れた直後に2度上げ下ろしするので、「ワンツー」の名前がついたんだとか。

 木綿豆腐が固まるまで20分待つ間も、休むことなく次の工程に移る。豆腐屋さんというのは空いた時間を少しもムダにしないんですね。次はがんも作りに入る。そうこうしている間に木綿豆腐の寄せが終わると、包丁で一回、崩してから型箱に入れるそうです。