■ヨーロッパで主流の豆腐は堅い

 清水豆腐店のライバルとなる豆腐には、スペインやドイツで作られている豆腐もある。バルセロナ近郊に大きな豆腐工場があって、そこで作られた豆腐がほとんどの食品スーパーに並べられているそう。

 それはカマボコのように堅くて、真空パックで売られてる。消費期限はこれまた、なんと1か月以上。そもそも私たちがイメージする冷ややっこで食べるような豆腐じゃなくて、豆腐ステーキやフライにして食べる豆腐らしい。火を通さないと食えないぞっていうような、とても生で食べられる代物じゃない。

 清水さんいわく「大豆を原料として豆乳を固めた食品であることに変わりはない」。おそらく清水さん、本音では「こんなものは豆腐じゃねえ!」と書きたいところをクールに書かれておりますが、よっぽど歯触わりが堅かったんでしょうね。

 さらにバルセロナでは、こんな豆腐も売られております。

 

  市内にたくさんある健康食品店やダイエット用品専門店にはドイツ製の豆腐が並んでいるが、これも真空パックされたカマボコのような堅い豆腐だ。ドイツ製はほとんど味付けされ、カレー味、マンゴー味、バジル入りなど色とりどりの製品が一〇種類以上ある。私はマンゴー味を買って食べてみたが、すぐ吐き出した(清水建宇.『バルセロナで豆腐屋になった――定年後の「一身二生」奮闘記』. 岩波新書, 2025, p.86)

 

 バルセロナでは、こうした真空パックの堅い豆腐が圧倒的多数を占めているそうです。

 どれもこれも清水さんが売りたい豆腐ではない。売ろうとしているのは、日本の街にしっかりと根づいている街角の豆腐屋の手づくりの豆腐。

 どれも「TOFU」の名前で売られているが、現地のものは清水さんの目指す豆腐とは似ても似つかない。

 清水さんはこう書かれております。

 

  おいしさに国境はないはずだとも思う。柔らかい豆腐があり、冷ややっこや湯豆腐のような食べ方があることをスペインの人に知ってもらえば、きっと理解されるだろう(清水建宇.『バルセロナで豆腐屋になった――定年後の「一身二生」奮闘記』. 岩波新書, 2025, p.86)

 

 師匠からの教えもあるんでしょうが、清水さんは昔ながらの豆腐作りにこだわって、防腐剤や保存料は絶対に使わない。一番大事なことは豆腐の鮮度。その鮮度のおいしさを味わってほしい。清水さんは、その思いで丁寧な豆腐作りをされているんですね。