■鳴門の巨大な渦潮は世界中でもここだけ

 実は、淡路島にも、海水を原料に釜で煮詰めて造られる“海塩”という伝統的な製法が伝わっています。

 この塩づくりこそ、海人の財産でした。3世紀頃から本格的な塩づくりを始めた彼らは、大量生産した淡路の塩を畿内の朝廷に献上していたそうです。きっと、塩と一緒に、瀬戸内海の魚の幸なども献上していたことでしょう。

 そうして、古代の朝廷に多大な貢献をした海人たち。自然と四国も重要な土地と見なされ、後年に編纂された記紀では、淡路島が特別な場所として描かれたというわけです。

 余談ですが、淡路島の近くには、世界三大潮流の一つ「鳴門の渦潮」がありますよね。大きく渦を巻く、その様子は、まさに国生み神話の天沼矛の場面と、そっくりだと思いませんか?

 私は、鳴門の渦潮にも強く引かれています。最大30メートルにも達する巨大な渦が発生するのは、世界中でも、ここだけ。人類の繁栄は潮の流れと深く関わっているといいますし、太平洋にも開かれたこの場所は、日本だけでなく、世界のはじまりの地の一つだったのではないでしょうか。

 ここから始まった古代文明が太平洋へと出て、世界を巡り、そしてまた、この地に戻ってきた。古代の日本人は世界を股にかける海洋民族だったと、そんな想像をしてしまうわけです。

貴乃花光司(たかのはな・こうじ)
1972年8月12日、東京都生まれ。88年、藤島部屋に入門。92年の初場所で、史上最年少の19歳5か月で幕内初優勝。兄・若乃花と「若貴フィーバー」を巻き起こす。94年11月に第65代横綱に昇進。幕内優勝22回。生涯戦歴は794勝で、「平成の大横綱」と呼ばれた。2018年に日本相撲協会を退職し、現在はテレビ、講演会等、幅広く活躍中。