■日本の何が商売になるのか?

 では、日本の何が商売になるのか――?

 私たち日本人は、そのことを今こそ考えるべきときに来ているんです。

 

  年配のスペイン人は「キヤノン」「ニコン」「ソニー」「パナソニック」などの名をあげて、日本製品の良さを讃える。(中略)三〇代より若いスペイン人は「漫画やアニメのファンだから日本が好き」という人がほとんどだ。スペインには子ども向けにアニメを放送するチャンネルがあり、「ドラえもん」「ドラゴンボール」「キャプテン翼」などを見て育った世代が社会の中堅になりつつある(清水建宇.『バルセロナで豆腐屋になった――定年後の「一身二生」奮闘記』. 岩波新書, 2025, p.139)

 

 かつて外国の方から見た日本のイメージといえば、「サムライ」「フジヤマ」「ゲイシャガール」。そうしたものとは打って変わった印象で、今の日本は注目されている。

 そんな中、“日本イズム”を受け継いだスペインの方もいらっしゃる。スペイン北部のパルスという村に住むアルベルトさんは、農薬を使わずに「あきたこまち」と「コシヒカリ」を栽培されているそうです。アルベルトさんは日本の農業を学んで、乾燥機を使わずにスペインの陽光と風にさらして乾燥させる“稲架掛(はさが)け”を取り入れていて、おいしい米だと大評判。

「日本」を売るためには日本で受け継がれてきた伝統技術を取り入れた「ジャパンファースト」でなければ“ホンモノ”はできない。アルベルトさんのような外国の方にもしっかり伝わっているんですね。

 さあ、いよいよ、ここからは今回のテーマのエンディング。私が一番しびれたエピソードです。

 本書で紹介されていた、日本からスペインに渡った一人の女性の話。

 バルセロナで初めて日本式カフェを開いて成功した純子さんという方。この方は航空会社の客室乗務員をされていて、勤続10年目の頃に、こんな体験をなさった。

 JR品川駅で電車を待っていた純子さんは、ホームで、めまいがして倒れた。そのときホームにいた人は誰一人として、自分を助けてくれなかった。その瞬間に純子さんの中で、日本人と日本に愛想が尽きた。この不幸な出来事に出くわした純子さんは、日本を飛び出してスペインで生きることを決めた。それが2006年、純子さんが31歳のとき。

 写真家でスペインでの仕事を引き受けていた婚約者の男性(後に結婚)と一緒にバルセロナに移住。スペイン語の学校に通いながらアルバイトする日々。

「日本みたいな、あんな国から抜け出せて本当によかった」

 しがらみのない異国での暮らしは彼女を生き生きとさせたそうです。