街中の至る所で見かける“麻辣”の2文字。上野や池袋といった本格派の中華料理店こと“ガチ中華”が軒を連ねるエリアに限らず、繁華街に出かければ見ない日はないのが花椒の痺れる辛さと唐辛子の刺激が特徴的な麻辣湯(マーラータン)だ。

このブーム、日本だけのことかと思いきやどうやらそうではないらしい。『世界の果てに、くるま置いてきた』(ABEMA)や『不夜城はなぜ回る』(TBS系)などの人気番組を手がけてきたテレビディレクターの大前プジョルジョ健太氏が語る。

「私が住んでいるシドニーの家の徒歩15分圏内だけで30軒ほど麻辣湯のお店があります。中でも、シドニー発の『No.1 Malatang』というチェーン店が人気で、この店だけで近所に3店はありますね。野菜やきのこ、海鮮、お肉などがずらっと並んだ店内には、中国人だけではなく、オーストラリア人も多くいます」

 日本を含むアジア諸国はもちろんのこと、ドイツやカナダなど、アジア以外の国でも麻辣湯を見かける機会が増えているという。中国の飲食店事業に詳しい関係者が話す。

「日本にも23店舗を構えている「楊国福麻辣湯」(ようごふくマーラータン)は、ドイツでも20店舗以上を展開。カナダやオーストラリア、シンガポールなど世界10か国で7000店舗以上を展開する巨大チェーンです。楊国福のライバルとされる「張亮麻辣湯」(ちょうりょうマーラータン)も日本以外にタイ、シンガポール、マレーシアなどアジア圏を中心に世界で6000店舗以上を出店し、グローバル化を加速させています」

 ドイツ在住の日本人が本サイトの取材に応じる。

「ベルリンやフランクフルト、ハンブルクなどの都市部のエリアを中心に流行っていますね。人気に火がついたきっかけはインスタグラムやTikTok。赤いスープの上に野菜が乗ったカラフルな見た目が“映える”と若者を中心に人気を呼んでいます」

 世界中で麻辣湯がトレンドになりつつある理由はどこにあるのか。上海・復旦大学に1年間留学し、ブログ『東京でガチ中華を食らう』を運営するライターの阿生氏は、麻辣湯特有のシステムに注目する。

「一番は、作りやすさにあると思います。スープにインスタントの粉を使ったり、バイキングスタイルの具材も、生鮮食品をあまり使わずにすむ。

 練り物、ワンタン類、海鮮、肉類、麺類に至るまで、野菜以外の多くに冷凍食品が使われます。麺を含む全ての具材を茹で、最後にスープをかけるだけで提供できるので、調理技術もほとんど必要ない。オペレーションとしてかなり楽ですし、ビジネスとしても参入障壁が低い」

 来店客が自らカスタマイズして調理するため、麻辣湯はローカライズしやすいという利点もあるようだ。

「日本での流行は、麻辣湯が”薬膳で健康に良い”という面もあるのですが、これは日本の中だけの広がり。本来の麻辣湯とは少し外れます」(前同)