武田鉄矢が、心を動かされた一冊を取り上げ、“武田流解釈”をふんだんに交えながら書籍から得た知見や感動を語り下ろす。まるで魚を三枚におろすように、本質を丁寧にさばいていく。
今回のテーマはズバリ! 「付加価値」というものについて語っていこうと思います。
話の友とさせていただくのは、本屋さんで偶然、それもビジネス書のコーナーで見つけた面白いタイトルの本。
『このオムライスに、付加価値をつけてください』(ポプラ社・柿内尚文著)
この“付加価値”という言葉に私は魅力を感じました。「俺はアイツより~」とか「これはあれより~」とか、何かと何かを比べるときの物差しの一つが、付加価値があるか、ないかではなかろうか。
我が身について考えると、70代も半ばを過ぎてなお、「選ばれたい」という気持ちがあります。例えばドラマの役を獲得するときもそう。抜擢してくれた側が私に何かしらの付加価値を感じてくれたのではないでしょうか。
私もまだまだですが、年を取っても「他人とは違う」という自分だけの価値を持っておくことは大事なんじゃないかなと思うんです。
本書はビジネス書ですが、でも私はこれを人生訓と結びつけました。誰しもが、年老いても自分の価値向上を狙うべきだと――。そのほうが生き生きしますから。
さて、著者は本のつかみで次のような設問をしております。
ハワイでダウンジャケットを売るにはどうしたらいいでしょうか?(柿内尚文.『このオムライスに、付加価値をつけてください』. ポプラ社, 2025)
言い換えると「常夏の国ハワイでダウンジャケットを売るにはどんな付加価値をつければ売れるのか」。
皆さんも考えてみてください。
答えは2通り。
1.ハワイ在住の人が、旅行や仕事で寒いエリアに行くとき用に売る
2.ハワイに来た旅行客用に売る
「※ただしこの2つは例で、答えはこの2つに限ったことではありません」と注釈付きではありますが、私はこの質問の答えに“なるほど”と思いました。
このとき、絶対に考えなきゃいけないのは、売る相手のこと。ハワイ在住の人に売るには、寒い国へ行く人を狙って売る。その場合、旅行や仕事で使うのに便利かどうかがセールスポイントになる。
例えば、コンパクトに畳めて持ち運びに便利だとか、旅行中や仕事中に使いやすいようにポケットがたくさんついているとか……それが付加価値になる。
では、観光客に売るときはどうすればいいのか。
何せ常夏の島なもので、ダウンジャケットなんて当然、要らないですよね。買ってもらうには、需要がある場所で売る必要がある。
それが、ハワイ諸島で最も高い山のマウナケア。高さが4200メートルもあり、とても寒いマウナケアに登るとき用に売るというわけです。
つまり付加価値というのは、目的・相手によって変わるものだということなんですね。