■加山雄三が歌い続けた年月も付加価値になる
例えば、私のはるか先に遠い背中が見える“徳光(和夫)じいさん”とかいますしね。失礼ながら横並びでは“梅沢(富美男)じいさん”とかね。徳光じいさんの泣き姿は老いるほど映えるし、梅沢じいさんの吠えっぷりは、年を重ねるほどにバラエティ番組に勢いと爆発力をもたらす。ニュース方面では“池上(彰)じいさん”がいて、実に分かりやすく難解なニュースを説明してくださる。まさにあの人はニュースの新たな見方を提示する“付加価値じいさん”ですよね。
加山雄三さんなんて“永遠の青春じいさん”だもんね。
でも、あの人が年取ってから歌っていたのは、それこそ価値のある後ろ姿だったなぁ。
私も一回だけ見たことあるけど、加山さんはどこに行っても要求される一曲がある。それが名曲『君といつまでも』。
映画『エレキの若大将』(1965年)の頃から歌ってるから、もう60年以上も歌い続けているけど、年を取れば取るほど、あの曲は値打ちが出るわけですよ。
私が生で聴いたのは加山さんが80歳を過ぎた頃だったけど、あの人が野外ライブでウン千人も集まった観客の前で、ちょうど夕陽が沈む頃に歌い出した。
イントロが聞こえてきてさ。
♪ふたりを夕やみが~♪
歌いだしたら観客は割れんばかりの拍手喝采。
つまりそれは、加山さんが歌い続けてきた年月、彼が積み重ねてきた年月が、あの歌に付加価値を付けて、聞く人を惹きつけているんですよね。だから『君といつまでも』は輝いているんだ。
そして加山さんご自身も老いることで年輪を重ね、風格を増し、夕陽のようなゴールドに輝く。
そこいくと、オレなんざ、シルバーにもなれない、くすんだ銅だもの。
でも、私はあのとき加山さんのあの後ろ姿を見ながら、つくづく思いました。
「一曲を歌い続けるっていうのは、年齢を負うごとに付加価値がついていくんだな」――と。
そう思ったとき、自分のヒット曲である『贈る言葉』をちゃんと歌い続けていこうと改めて思いました。
商品もサービスも人も…価値がなかなか伝わらないのは、「付加価値をうまく作れていないから。
仕事はもちろん、人生にも役に立つ一冊。」(著)柿内尚文、ポプラ社刊。

武田鉄矢(たけだ・てつや)
1949年生まれ、福岡県出身。72年、フォークグループ『海援隊』でデビュー。翌年『母に捧げるバラード』が大ヒット。日本レコード大賞企画賞受賞。ドラマ『3年B組金八先生』(TBS系)など出演作多数。