■体に染み渡るような優しさ

 ネット上でも、この「だし巻き特化」の動きに「プロが焼いただし巻きは家とは別物。お箸を入れた瞬間に溢れ出す出汁の量に感動したし、1500円払う価値は十分にある」「トッピングで味変できるから最後まで飽きないし、むしろボリュームがありすぎてお腹パンパンになった。卵3個分の満足感はすごい」「最近はごちゃごちゃした料理より、だし巻きと白米みたいなシンプルな組み合わせが一番贅沢。体に染み渡るような優しさがたまらない」といった声が聞かれます。

「健康意識の高まりや『失敗したくない』という消費心理が、このブームを支えています。だし巻き玉子は日本人にとって最も親しみ深い料理の一つですが、プロのように出汁をたっぷりと含ませて美しく焼き上げるのは至難の業。その『家庭の延長線上にある究極形』を1500円という、少し背伸びすれば届く価格で提示したことが勝因でしょう。卵の高騰は続いていますが、一過性の流行ではなく、職人技を身近に味わえる『高満足度な日常食』として、さらに拡大していくと見ています。もともとカフェで提供していた玉子サンドから専門店化する流れもあり、業態転換の成功モデルとしても注目すべき動きです」(グルメサイト編集者)

 かつては家庭料理の代名詞だった一皿が、熟練の技と現代的な演出によって、行列の絶えない高級ランチへと昇華を遂げました。卵不足や価格高騰という厳しい環境を逆手に取り、素材の力を最大限に引き出す「だし巻き定食」のマジック。自慢の出汁がたっぷり染み込んだその黄金色の一切れは、空腹を満たすだけでなく、忙しい現代人の心までふんわりと包み込む最強の癒やし飯となっているようです。

トレンド現象ウォッチャー・戸田蒼
大手出版社でエンタメ誌やWEBメディアの編集長を経てフリー。雑誌&WEBライター、トレンド現象ウォッチャーとして活動中。