■宿禰の説話と一致する埴輪の製造拠点を発見

 また、2021年には、奈良市の研究チームによる論文が注目を集めました。

 実は埴輪は、宿禰が登場する以前から存在していました。冒頭で述べた円筒埴輪がまさにそうで、そちらのほうが歴史は古いんですね。ゆえに、宿禰の埴輪発案説は無理がある。そんな指摘が、これまでありました。

 対して研究チームは、日本書紀に記された宿禰の説話と一致する“埴輪の製造拠点”が、奈良にあったことを発表。宿禰が出雲から土部を招き、埴輪を生産した痕跡が見つかったんです。

 土管のような形の円筒埴輪は存在していましたが、家や人、動物などをかたどった形象埴輪は宿禰の時代から出現しているとのこと。

 埴輪に“殉葬の代わり”という新たな目的を持たせたのは伝承通り、やはり宿禰なのではないでしょうか。

 宿禰の実在性については、各地に残る伝承地が、根拠としてよく挙げられます。

 例えば、力くらべで、宿禰は蹶速の腰を折って勝利したんですが、奈良県香芝市には“腰折田”の伝承地が残っていますし、その近くの桜井市には、相撲発祥の地の一つである、『相撲神社』があります。

 ちなみに、埴輪の中には、力士をかたどったものがあるそうです。宿禰の出生地である島根県でも発見されているので、いつか見に行きたいものです。

貴乃花光司(たかのはな・こうじ)
1972年8月12日、東京都生まれ。88年、藤島部屋に入門。92年の初場所で、史上最年少の19歳5か月で幕内初優勝。兄・若乃花と「若貴フィーバー」を巻き起こす。94年11月に第65代横綱に昇進。幕内優勝22回。生涯戦歴は794勝で、「平成の大横綱」と呼ばれた。2018年に日本相撲協会を退職し、現在はテレビ、講演会等、幅広く活躍中。