2023年2月末、数多くの人気番組を手がけてきたテレビプロデューサーがテレビ東京を去った。『家、ついて行ってイイですか?』のプロデューサーを務め、2021年にはYouTubeチャンネル『日経テレ東大学』のプロデューサーとなり、登録者数は100万人を超える人気を得た。売れに売れていた高橋弘樹は、なぜ会社を辞めたのか――。【第4回/全4回】

「不便さが顕在化してきた18年だった……」高橋氏がテレビマンになった2005年と、2023年の現在ではテレビ業界を取り巻く環境に大きな変化があった。しかし、それでも「テレビは捨てたもんじゃない」と断言する理由と、テレビのこれからを聞いた。

――数あるテレビ局の中で高橋さんがテレビ東京を選択した理由はなんですか?

 入社当初はあんまりテレ東見てたわけでもないし、テレビ業界にどうしても入りたかったわけでもないんです。けど、ご縁があってたまたま引っかかって。入ってみたら水が合って、すごく楽しかったです。

――キー局の中でも最後発のテレ東という複雑な立ち位置でもあるテレビ東京だからこそできたことはありますか?

 全部が”テレ東ならでは”で、こんなにディレクターが主体になったりするのは珍しいです。他局は会社の信用力とメディアの力、経営力でタレントをブッキングできるじゃないですか? だからこそタレント主体の企画が多いと思うんですけど、テレ東はその力が弱いのでディレクター主体で企画を考えます。あと手作り感もテレ東ならではかな(笑)。

 今は他局も予算がなくなってきて番組を手作りしてますが、入社した2005年当時は、作り手としての自分の思いをコンテンツに反映させることしか資本がなかったと思います。テレ東の人はやっぱりカメラもうまいと思いますし、1人でやる裁量も多いからこそみんな台本も書けるし、ナレーションも上手な人が多いです。