■CFPの回答
――高校授業料無償化の影響もあり、中学受験を行なう子供の数は増えています。中学受験を行なうとなれば、小学4年生は70万円ほど、小学5年生は80万円ほど、小学6年生の1年間では塾代は200万円もかかる場合もあるといいます。その後、私立中学校へ進学するとなれば3年間で授業料が300万円は必要になることも珍しくありません。家計における教育費が埋める適切な割合とその理由を教えて下さい。
まず前提として確認したいのは、高校授業料の無償化で軽くなるのは主に「高校の授業料部分」だけだという点です。2026年度からは私立高校の就学支援金上限が年45万7200円に引き上げられ、所得制限も撤廃されましたが、教材費、制服代、通学費、修学旅行費、部活動費などは引き続き別途必要になります。
教育費が家計に占める適切な割合については、一概にこれが正解とは言えませんが、一般的な家計水準や各種統計を踏まえると、在学中の教育費が手取り収入の10〜15%程度であれば、生活費や貯蓄とも比較的両立しやすい水準と考えられます。一方で、これが20%、30%と上がっていくと、家計の余力は急速に低下しやすくなります。
中学受験に伴う塾代は、特に短期間に集中して発生する点に特徴がありますし、その後も私立中学、高校、大学と教育費の支出が続いていきます。こうした先々の負担まで見据えると、継続的に対応していくには、名目年収よりも、税金や社会保険料を差し引いた後の手取りベースで考えることが重要です。その意味では、手取りで700〜800万円程度の余力がなければ、現実的にはかなり厳しいケースが多いのではないかと感じます。
――中高一貫校や大学付属校への進学、中学受験のための塾への通塾ですが、子供の将来のための投資と考え無理をして費用をねん出しようと考えてしまう親も多いと思います。高額な教育費をねん出するために家計のどの部分を見直せばよいのでしょうか。家計を見直す際のポイントを教えて下さい。
見直しの順番としては、一般には固定費から着手するのが基本です。具体的には、住居費、保険料、通信費、自動車関連費、サブスクリプションなどです。変動費を細かく切り詰めるより、固定費の見直しのほうが継続的な効果が出やすく、教育費のような長期支出との相性もよいと考えられます。特に住宅ローンや保険は金額が大きいため、見直し余地があるか確認する意味は大きいと思います。
そのうえで、教育費についても「聖域化しない」ことが重要です。親としては、子供の将来のためと思うと支出を増やしやすいのですが、塾や講習、個別指導は際限なく膨らみやすい面があります。したがって、家計から見て無理のない年間上限をある程度決め、その範囲で教育サービスを選ぶという考え方が必要ではないでしょうか。教育費を増やす判断をするなら、同時に生活防衛資金が確保できているかも確認したいところです。
――中学受験に年間200万円も支払うならば他に様々な経験をした方が将来のためになる。家庭もギスギスせずに子供ものびのび育つという考え方もあるかと思います。今回検証を行なった田中家のケースですと塾代が不要になった場合、年間250万円ものお金が浮きます。そうなった場合、どのような用途にお金を使用できると考えられるでしょうか。
必ずしも受験勉強だけが子どもの将来への投資ではありません。習い事、体験学習、旅行、語学、スポーツ、文化活動などに資金を振り向ける考え方も十分あり得ます。どの支出が最も有効かは家庭の価値観によりますが、教育費の使い道を「受験一本」に限定せず、子供の適性や家族全体の生活の安定も含めて考えることが大切ではないかと思います。
また、大学入学資金を準備しておくことも考えられます。私立大学の初年度学生納付金平均は約150万円とされており、大学進学時にまとまった資金が必要となります。高校授業料への支援が拡充されても、大学の費用まで軽くなるわけではありませんので、塾代が不要になった分を大学入学の資金に振り向けるのは、非常に現実的な使い方だと思います。
宮岡秀峰(みやおか・しゅうほう)
公認会計士、税理士、行政書士、CFP資格(日本やアメリカなど世界各国・地域で認定されている国際的なファイナンシャル・プランナーの最上位資格)。税理士法人アクシア代表社員、アクシア公認会計士事務所代表。公認会計士として会計・財務の視点から中小企業支援に取り組むほか、相続・事業承継分野にも幅広く携わる。講演や税務相談の実績も豊富で、会計・税務分野の書籍共著、雑誌寄稿も行なっている。
税理士法人アクシア 公式HP:https://axia.or.jp/