■CFPの回答
――住宅を借りる場合、家賃は手取りの25%ほどまでとも言われていますが、その理由と根拠を教えてください。
家賃を「手取りの25%程度まで」と言うのは、法律や公的な厳密基準があるわけではなく、家計を無理なく回すための安全寄りの目安として使われることが多いです。特に子育て世帯は、今後、教育費や医療費、急な出費が増えやすいため、住居費に使い過ぎないよう少し保守的に見ておく、という考え方です。
住居費は毎月ほぼ確実に出ていく固定費で、一度上げると下げにくいですが、教育費、医療費、保育料、時短勤務による収入減など、子どもが生まれると家計の不確定要素は一気に増えます。だからこそ、住居費に使いすぎない“余白”が必要です。
国立社会保障・人口問題研究所の資料では、住宅費が可処分所得の40%を超える状態を「住宅費過重負担」と定義しています。そう考えると、40%に近づく前に余裕を持たせる意味で、25%前後をひとつの目安にする考え方には一定の合理性があると思います。
ただし、これはあくまで目安です。共働きで今後も収入が安定していて、教育費の方針や貯蓄計画がはっきりしているご家庭なら、一時的に25%を超える判断が絶対にNGというわけではありませんが、育休や時短勤務、転職などで手取りが下がる可能性があるなら、今は少し慎重に考えたほうが安心です。
今の東京では25%に収めること自体が難しくなっていますが、だからといって基準を捨てていいわけではありません。むしろ相場が高い今こそ、家賃をどこまで上げるかは冷静に見るべきです。
――現在の都内の賃貸物件事情では、世帯収入の手取り25%以内に家賃を収めるのが難しいのが実情。家賃をねん出するために家計を見直すとしたらどの点を見直すべきでしょうか。
家賃を捻出するために家計を見直すのであれば、まず確認したいのは、毎月ほぼ自動的に出ていく固定費です。たとえば、通信費、保険料、サブスク、車関連費などが挙げられます。日々の買い物を細かく切り詰めても、節約効果は月数千円程度にとどまりがちですが、固定費は一度見直せば、その効果が毎月続きます。まずは家計簿を細かくつけるよりも、「毎月自動的に引き落とされているお金」を一覧にして把握することが先です。
実務的に見ると、見直しの効果が出やすいのは保険料です。特に医療保険や貯蓄性保険については、保障内容と保険料のバランスを一度確認しておきたいところです。次に見直したいのが通信費です。夫婦2人分のスマホ代に加え、光回線、動画配信、音楽配信、クラウド、各種課金サービスまで合計すると、想像以上に固定費が膨らんでいることがあります。さらに、ジムやウォーターサーバー、宅配サービス、有料会員など、解約しないまま続いている支出も見直しの対象になります。月数千円の支出でも、家賃が上がる局面では積み重なると無視できません。
――家賃が高いならば郊外へ引っ越すのもひとつの選択肢になるかと思います。郊外へと引っ越す場合に気を付けるべきポイントを教えてください。
郊外への引っ越しは、家賃を下げる有力な選択肢ですが、「家賃だけ安くなって、生活全体では逆に大変になる」ことがあるので注意が必要です。特に共働きでお子さんが小さいご家庭では、通勤時間が延びることの負担は、お金以上に大きくなりやすいです。家賃が数万円下がっても、通勤定期代、保育園への送迎時間、残業や急なお迎えへの対応、タクシー代や時短家電・外食の増加まで含めると、実質的な負担が増えることがあります。
郊外を検討するなら「家賃差」ではなく「家計と時間のトータルコスト差」で比べるのが大切だと思います。特に重視したいのは、駅距離よりも、保育園・勤務先・スーパー・病院までの生活動線です。郊外で部屋が広くなっても、送迎や通勤が回らなくなれば、暮らしやすさはむしろ下がります。引っ越し先を考える時は、休日の内見だけでなく、平日の朝夕を想定して、「誰が送るのか」「急なお迎えは間に合うのか」まで平日の生活動線を実際にシミュレーションすることをおすすめします。
――お金のプロであるFPの皆さまが賃貸物件を探す際に重要視しているポイントなどがあれば教えて下さい。
FPの立場で物件を見るなら、重視するのは家賃の絶対額よりも、家計として無理なく支払いを続けられるかどうかです。今の収入で払えるかではなく、1年後、3年後も無理なく払い続けられるかを見ています。
子どもが小さい時期は、想像以上に支出が変動しやすいものです。保育料、習い事、家電の買い替え、時短勤務、病気対応など、毎月同じようにはいきません。だからこそ、家賃はできるだけ背伸びし過ぎない水準にしておいたほうが、その後の教育費や貯蓄に対応しやすくなります。
宮岡秀峰(みやおか・しゅうほう)
公認会計士、税理士、行政書士、CFP資格(日本やアメリカなど世界各国・地域で認定されている国際的なファイナンシャル・プランナーの最上位資格)。税理士法人アクシア代表社員、アクシア公認会計士事務所代表。公認会計士として会計・財務の視点から中小企業支援に取り組むほか、相続・事業承継分野にも幅広く携わる。講演や税務相談の実績も豊富で、会計・税務分野の書籍共著、雑誌寄稿も行なっている。
税理士法人アクシア 公式HP:https://axia.or.jp/