■日本列島に迫るもうひとつの危機

 日本列島に迫る悪夢は、それだけではない。もう一つが、富士山の噴火だ。

「活火山である富士山では、1707年に起きた前回の宝永噴火から300年以上も大規模噴火がありません。これほど富士山が沈黙していた歴史は過去になく、“次”が、いつ起きても不思議ではないんです」(前同)

 火山の噴火というと、マグマによる被害をイメージしがちだが、むしろ、それは限定的。本当の脅威は火山灰にあるという。

「広範囲に降り積もる火山灰はガラス質を含み、水を吸うと非常に重くなります。そのため、旧耐震の建物では倒壊の危険があります」(前出の鴨川氏)

 小さな火山灰粒子は気管や肺を傷つけるため、当然、人体への影響も大きい。2025年3月に国が公表した対策ガイドラインでは、広域降灰時は《できる限り自宅等に留まって生活を継続すること》としている。

 その降灰エリアは図にあるように、富士山の東側。東京や神奈川、埼玉など、人口密集地域と重なるため、

「宝永噴火では約2週間も降灰が続きましたが、今、同様の降灰が起きれば、道路、鉄道、飛行機の交通網のすべてが機能停止します。電線にも影響を与え、電気が広範囲で停電する可能性も。

 その結果、物流が止まるため、家から出られないまま、電気も食料もない最悪の状況になることも考えられます」(消防庁職員)

 南海トラフ地震と富士山の噴火。どちらも比肩できない恐怖があるが、まさかの連続発災もある。

「宝永噴火はマグニチュード8規模の宝永地震の49日後に発生しました。この地震は南海トラフ地震の一つであるため、最悪の組み合わせという可能性も考える必要があります」(前同)

 どちらが先に起こるのか、あるいは同時に起きるか。日本列島は今、3つの恐怖を目の前にしている。

鴨川仁(かもがわ・まさし)
静岡県立大学グローバル地域センター地震予知部門特任准教授。東京学芸大学准教授を経て、2019年4月より現職。専門は地球惑星科学、科学教育。