■ミシュランに選出される店も

 店舗で働く店員は外国人も珍しくないちゃん系ラーメン店だが、これは店舗運営のためのオペレーションが明確だからだと藤野氏は指摘する。

「外国の方が働いているイメージはかなり強いですが、オペレーション設計や作り方のノウハウがしっかりしているからこそ、再現しやすいのだと思います。盛り付けから配膳、麺をゆでる時間まで含めて、マニュアル化し徹底されている印象です」

 そんなちゃん系ラーメンのルーツとされるのは、神田駅ガード下にある『神田ちえちゃんラーメン』。そこから『新宿えっちゃんラーメン』『池袋ひろちゃんラーメン』へと広がり、毎月開催されてきた勉強会が、後の『ちゃんのれん組合』の土台になったとも言われている。

 ちゃん系ラーメンには“昭和世代”を惹きつけて離さない魅力があるのだという。

「ベースは鶏ガラと豚骨系のだし。ただ、白濁はさせず、見た目はクリアな動物系清湯。懐かしさがありながらも、スープの輪郭はくっきりしていて、麺には平打ち麺を使います。昔ながらの中華そばを思わせつつ、表面には脂をしっかり浮かせて熱さとパンチを加えるなど、今の感覚に合うよう、きちんとブラッシュアップされているのです。その親しみやすさが、多くの人の胃袋をつかんでいるのだと思います」(前同)

 試行錯誤の末に生まれた1杯は、今や世界的な評価にも手が届き始めている。『ミシュランガイド東京2026』では、銀座に店を構える『銀座はるちゃんラーメン』がビブグルマンに選出されている。ビブグルマンとは、レストランガイドブックのミシュランガイドが“価格以上の満足感が得られる料理”を提供する店に与える評価だ。新橋にある『はるちゃんラーメン』で23年にビブグルマンを獲得すると、『はるちゃんラーメン』の系譜はそれ以降4年連続でビブグルマンに選ばれている。世界基準でも評価される店が現れたことで、ちゃん系ラーメンは業界内でも一つの確立したジャンルとして見られるようになったようだ。

「ラーメン業界で、特定のジャンルが成長するにはカリスマ的な店舗が出てくることが大事です。これは、そのジャンルのラーメン作りに携わる他の店舗にとっても大きな目標になります。のれん分けをして横に裾野を広がるだけでなく、“あの店を目指したい”という意識が店舗間に生まれることで、ジャンルとしての厚みも出てくるのです」(同)

 現に今では、『ちゃんのれん組合』に属さない“ちゃん系インスパイア”の店まで登場している。

「マネをする店が現れていること自体、ちゃん系がひとつのジャンルとして確立されてきた証拠でしょう。今後もちゃん系ブームは止まらないのでは」(同)

 ラーメン価格が右肩上がりのこの時代に、味と価格のバランスが消費者に高く支持されているちゃん系ラーメン。そんな1杯は、今や確実に業界内の“新定番”として認識され始めている。

(取材・文・久保純)

藤野弘行(ふじの・ひろゆき)
1978年生まれ。日本のラーメン文化を世界へ発信し、訪日外国人向けに特化したラーメンの講座作り、コンシェルジュ、店舗アテンドまでを手がける、日本唯一のインバウンドラーメンコンサルタント。麺文化の深化と発展を担う全国コミュニティ「東京麺会」「大阪麺会」代表。マツコの知らない世界(TBS系)にラーメン専門家として二度出演のほか、テレビ番番組の監修・出演、執筆活動など、多方面で活動。