■普段の行動から“危険サイン”を判断する方法とは?
ドライビング・ヘルスは3年前からトヨタの販売店に設置され始め、今では6000人のデータが集まった。そこから見えてきたこともあると、前出の青木氏は言う。
「免許返納って、最後は家族の問題に集約されていくんです。“周りが反対していても本人が運転したがっている”というケースが非常に多いですから。でもお父さんにテストを受けてもらって、その点数が低かったりすると、本人も納得して返納してくれる。数字に説得力が伴っているので、感情論にならなくて済むんです」
健康診断を毎年受けるように、定期的に自分の運転能力も確認したほうがいいのは事実だろう。だが、ドライビング・ヘルスがすぐ近所にあるとは限らない。そこで普段の行動から“危険サイン”を判断する方法も特別に教えてもらった。
【1:歩くスピードが遅くなる】
「”駅までの時間が倍になった”とか”信号が青のうちに渡れなくなった”というのは要注意ですね。これは全身の機能が、運転に必要なレベルを割り込んでいる証拠です」
【2:階段や道路でつまずく】
「これは単に足が上がっていないだけではなく、視野の欠損が原因であることが多い。すぐ眼科で視野検査を受けたほうがいいと思います」
【3:物忘れが激しくなった】
「トイレットペーパーを買いに来たのに、洗剤だけ買って帰ってしまった……そういったミスが頻出するようだと、マルチタスク能力が落ちている可能性は高い」
日常の中の“ちょっとした違和感”を見過ごしてしまうと、取り返しのつかない事故の引き金になるーー。そう肝に銘じるべきだろう。
青木宏文(あおき・ひろふみ)
名古屋大学未来社会創造機構モビリティ社会研究所 特任教授。博士(工学)。1996年早稲田大学理工学部機械工学科卒業。以降、東京工業大学大学院総合理工学研究科人間環境システム専攻、カリフォルニア大学デービス校大学院心理学専攻(文部省派遣奨学生)、マサチューセッツ工科大学およびNational Space Biomedical Research Institute研究員、07年トヨタ自動車株式会社勤務を経て、2014年より現職。共著に『高齢社会における人と自動車 モビリティイノベーションシリーズ』(コロナ社)など。