■ドラマの撮影現場を見てきた筆者が指摘する"照明"の重要性
そしてもう一つ、SNSで話題になっているのは、その「映像美」だ。「どこかノスタルジーを感じる」「まるで映画の映像のよう」といった玄人目線の言葉も散見されている。この映像の素晴らしさは、撮影監督として参加している宗賢次郎氏の手腕によるところが大きい。
宗氏は、そもそも照明技師であったが、近年は撮影監督として、映画「ゴールド・ボーイ」、「遠い山なみの光」「#拡散」などで手腕を発揮してきた。照明技師は光の配置や色、強さを綿密に組み立てて空間の質感を高めるという重要な役割を持っている。時折、「なんだかこのドラマ、映像が安っぽいな」と感じる作品に出くわした経験のある視聴者も多いだろうが、これは明らかに予算的に、照明の数を減らした結果だ。
筆者は全キー局で、数多くのドラマ現場へ潜入取材をしてきたが、やはり、予算の少ない局やドラマでは、明らかに照明の本数が少なく、オンエアで見ても、どうしても質感的に見劣りするものが多くあった。そしてテレビが黄金期を過ぎ、視聴率が低下してきた局で、照明の本数がクールを経るごとに少なくなっていったのも、目の当たりにしてきた。結果、さらに視聴率が落ちる…このループを見てきて、やるせない気持ちになった経験もある。
では具体的に、照明が『田鎖ブラザーズ』にどんな影響を与えているのか。
まず最初に挙げられるのは、真と稔、この2人が「川崎」という都心から少しだけ離れた場所で掲示をしているという「場所」にまつわるリアリティだ。もし、都心ならば、もっとアヴァンギャルドに魅せるか、もっと明るい照明になっていただろう。もっと地方や田舎ならば、太陽光ののどかさなどで、地方・田舎感を出せるかもしれない。やや暗めの立体感あるこの照明がちょうど「川崎」という都心から外れた場所の刑事という現実味を出している。
このほか、照明で映像の印象がガラリと変わるため、伏線、もしくはミスリードにも使える。仮にだが、兄弟を支える町中華「もっちゃん」の店主である茂木(山中崇)が怪しく見えるのも、厨房の奥にいることもあるが、顔に影が落ちている、その効果もある。逆に事件の鍵を握っているのに、そうは見せないという時にも使える。これも仮にだが、晴子の質屋でのシーンは、小道具の効果もあり、怪しさと華やかさを両立。情報屋としての色を全面に出しており、怪しいかそうでないのか、どちらとも取れる光の回し方をしている。