■いずれ”局アナ”は消滅する可能性も――

 また鎮目氏は、AIアナウンサーについて、NHKやTBSの『Nスタ』を例にこう話す。

「NHKはAI開発に力を入れていて、もはや普通のストレートニュースを読ませるだけなら何も問題ないくらいの完成度になっています。

 これまで局アナは、たとえば深夜の緊急ニュースなどに対応するために待機している必要もあったんですが、NHKではそういう仕事をAIに置き換えていると。TBSもそうですが、各局でストレートニュースをAIに任せる方向に舵を切っているんですよね。クオリティ的に問題ないばかりか、読み間違いもないし、正確性も担保できているわけで……報道側の意見としては、むしろ正確性を重視するニュースであれば、AIの方がいいんじゃないかという考えが、業界の主流になってきています」

 ここまでの話はいずれも局側の話だが、鎮目氏曰く「アナウンサー側も、近年やる気がなくなる出来事が続いています」という。

「アナウンサーになりたい人には、それぞれ“目的”がありますよね。ですが、たとえば“ニュースを読みたい”という理由でアナウンサーになったとして、先に述べたようにAIがある。それに、現在のテレビでは、局アナがメインを張っている大きなニュース番組というのがほとんどない。フリーアナウンサーや外部のジャーナリスト、タレントたちがニュースや情報番組のMCをしていることが多いですよね」

 報道以外では、スポーツ実況やバラエティ番組のMCなどが”局アナの憧れ”なイメージもあるが、

「プロ野球中継などがそうですが、そもそもスポーツイベントを地上波でやらなくなりつつありますよね。配信に移行していて、地上波でのスポーツ番組自体が減っていると。

 バラエティ番組にしても、働き方改革の影響で、身体を張ったロケや拘束時間が長いロケを局アナにやらせづらい。そうなってくると――現在のテレビには“局アナとして出たい番組”というのが、そもそも少ないんですよね」

 テレビ局を辞めた先輩アナウンサーたちの進路も、現役の局アナの考え方に影響を与えているようだ。

「実は、アナウンサーは、コミュニケーション力も高いし頭の回転もいいし、辞めてからも引っ張りだこなんですよね。それもあって、フリーアナウンサーとして活躍する人だけでなく、弁護士に転身したり、大手企業の広報になったり完全に別の業種で働いている人も多いですよね」

 最近で言えば、元テレビ朝日アナウンサー・富川悠太氏(49)は22年3月末に退社し、同年4月からトヨタ自動車に入社。同社の動画番組でのキャスター業に加えて、ラリードライバーとしてデビューするなど、活躍している。

「そうやって楽しそうに活躍している先輩たちを見て、 “無理に局アナとして頑張らなくても自分の好きなことに特化した方がいいんじゃないか”と考えるアナウンサーが増えています。そうした流れもあり、局側もアナウンサーを雇う理由がなくなりつつあるのが現状だと思います。個人的には、いずれ“局アナ”という職業はなくなってしまう可能性も高いと思っています」

 テレビ各局からアナウンサーの退社が相次ぐなか、将来的には“局アナ”という職業もなくなってしまうのだろうか――。

鎮目博道
テレビプロデューサー。92年テレビ朝日入社。社会部記者、スーパーJチャンネル、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。ABEMAのサービス立ち上げに参画。「AbemaPrime」初代プロデューサー。2019年独立。テレビ・動画制作、メディア評論など多方面で活動。著書に『アクセス、登録が劇的に増える!「動画制作」プロの仕掛け52』(日本実業出版社)『腐ったテレビに誰がした? 「中の人」による検証と考察』(光文社)