「おい! 切符切られんぞ!」

 道路に響いたその声は、走行する車から発せられた。助手席に座った男性が窓を開け、近くを走る自転車に向けて怒鳴ったのだ。このとき、息子と共に自転車に乗っていたという40代の男性が話す。

「私と息子が自転車で交差点を左折したら、車から怒鳴り声が飛んできたんです。その人が言うには、私たちが一時停止をしなかったと。ただ、警察じゃない人に言われるのはちょっと……。息子も驚いてしまって、もう自転車に乗るのが怖いって怯えています」

 背景にあるのは、4月1日に行われた道路交通法改正によって新設された交通反則通告制度、いわゆる”青切符”だ。この制度により、自転車運転の違反に対して113項目の反則金が定められた。青切符に対してX上では、

《下手に自転車乗ったら金取られんじゃん》
《一時不停止5000円って、高……》
《気軽に乗れるのが自転車のいいところだったのに、もう乗れないかも》

 など、不満と不安が交錯している。

 しかし、多くの人が青切符を誤解しているという。NPO法人「自転車活用推進研究会」理事を務める自転車ツーキニストの疋田智氏が解説する。

「青切符導入を“厳罰化された”と受け止める声が多いですが、実際には逆です。これまで自転車の違反は赤切符しかなく、軽微な違反でも刑事罰の対象でした。たとえば、傘差し運転は、懲役3か月以下または5万円以下の罰金という扱いだったんです。ただ、それは現実的に運用しづらかった。車なら青切符で済む軽微な違反が、自転車では赤切符になるのは、法の下の平等という観点からも問題がありました」

 自転車の傘差し運転が懲役になると聞いて、受け入れられる人はいるだろうか。つまり青切符は、こうした極端な処罰しかない状況を改めるために導入されたのだ。

「青切符導入後、傘差し運転は反則金5000円です。刑事罰から反則金という行政処分に変わったため、ペナルティとしては軽くなっています。ゼロか100かしかなかったところに、中間的な処罰ができたということですね」(前同)