■青切符を切られる場合とは
では、実際に青切符はどの程度切られているのか。全国紙社会部記者が話す。
「警察庁によると、自転車への青切符導入後1か月の間に全国で交付された件数は2147件。一方、指導警告は13万5855件です。つまり、大半は青切符ではなく、警告カードなどによる指導で済んでいるということです。2025年中の自転車交通違反の検挙件数は、月平均4268件でしたから、取り締まり強化の効果は出ていると言えるでしょう」
この意見に、前出の疋田氏も同意する。
「青切符はすぐに切られるわけではありません。基本は指導・警告です。すぐに切られる対象は決められています。“ながらスマホ”、“ブレーキなし”、“遮断機が下りた踏切への侵入”、“複合違反”、“警察官の指示に従わない場合”、“反則行為が他者に影響を与えた場合”の6つです」
取り締まりが甘いから違反してもいい、という話ではない。だが、必要以上に青切符を恐れることはないのだ。その一方で、今回の騒動は、“自転車はどこを走るべきか”という問題も浮かび上がらせた。日本では自転車が歩道を走る光景も珍しくないが、道路交通法上、自転車は軽車両であり、原則は車道だ。
「自転車が車道を走ると危ないという意見もありますが、長い目で見れば、車道を通った方が安全ですし、そうした研究結果も出ています。今後必要なのは、インフラ整備です。自転車が歩道を走るのは、世界でも日本ぐらいなんです」(前同)
欧米社会では、自転車通行は原則車道。歩道通行は、あくまで例外だという。自転車が車道を走ることを前提に世界の交通が作られている中、自転車の交通分担率が50パーセントを超える自転車先進国デンマークでは、さらなる発展が遂げられている。
「デンマークの首都、コペンハーゲンは自転車道がない通りなんてどこにもない。それどころか、自転車の高速道路が通っているんです。将来的に、日本もそうなったらいいなと私は思います。そのためにも、車道は車と自転車が共有するものだという意識を持つことが、今後の基本になってくるのかなと思います」(同)
自転車が邪魔、車が邪魔といがみ合うのではなく、ゆずり合う。認識を正しくすれば、青切符は車道の安全を守るカードになるはずだ。
疋田智(ひきた・さとし)
1966年生まれ。東京大学工学系大学院(都市工学)修了、博士(Ph.D.環境情報学)。学習院大学、東京都市大学、東京サイクルデザイン専門学校等非常勤講師。毎日12kmの通勤に自転車を使う「自転車ツーキニスト」として、環境、健康に良く、経済的な自転車を社会に真に活かす施策を論じる。NPO法人自転車活用推進研究会理事。著書に『ものぐさ自転車の悦楽』(マガジンハウス)、『自転車の安全鉄則』(朝日新聞出版)など多数。