富士山、寿司、芸者――。

 日本を訪れる外国人観光客にとって定番の訪問地だったはずの選択肢に現在、大きな変化が起きているという。都内の旅行代理店関係者が話す。

「昨年、日本を訪れた外国人観光客の数は4268万3600人と一昨年よりも580万人増え過去最多を更新しました。そんな中、ドラッグストアや家電量販店での爆買いツアーだけでなく、日本の美容室に足を運ぶ人が急増しているというのです」

 事実、美容業界ではインバウンド向け需要の急増が予測されている。

「美容サロン業界向けの調査・研究機関『ホットペッパービューティーアカデミー』の調査では、美容サロンのインバウンド市場は2024年時点で約197億円。30年には約445億円まで拡大すると予測されています」(美容業界関係者)

 美容室業界が外国人客の獲得に躍起になる背景にあるのは近年、業界内で相次ぐ店舗の倒産だ。

「帝国データバンクによれば、25年の美容室の倒産件数は235件。2年連続で過去最多を更新しました。材料費や光熱費の高騰、人手不足、低価格店との競争が重なり、小規模サロンほど厳しい状況に追い込まれています」(前同)

 苦境が続く美容室業界にとって、新たな市場となり得るインバウンド客の取り込みは急務というわけだ。現在、渋谷と新宿に店舗を構え月に50万円ほどインバウンド客からの売上があるというヘアサロン『VAICE』代表取締役で、自身も現役の美容師として活躍する浅野宏明氏が話す。

「コロナ禍が明け、円安も重なった一昨年、昨年あたりから、飛び込みで来店される外国人のお客様が増えました。日本人美容師の技術を評価してくださる方も多く、海外と比べて、この価格でこの技術ならお得だと感じているのだと思います。当店の場合も、HP上の店舗説明には英語表記を入れています。海外の方が検索したときに、まず“ここはヘアサロンだ”と分かってもらわないとダメですから」