■腕のある芸人しかもう「嫌いな芸能人」トークは成立しない

 三杉氏はそういった時代の変化も踏まえたうえで、今回の件を分析する。

「これはお笑い芸人の話ですが、芸人の場合は悪口であっても、名前を出されてなんぼなところはあるんです。鬼越トマホークが攻めた“○○な芸人ランキング”を発表する企画なんかが分かりやすいですよね」

 鬼越トマホークは、自身のYouTubeチャンネルで「吉本が本当に辞めさせたい芸人」「とにかくイタい芸人」「次に大物女性芸能人を喰いそうな芸人」など、攻めたランキング企画を組んでいる。そこでは数多くの芸人の裏話が紹介され、意外な人柄などが話題になることも多い。

「鬼越のような人気芸人に名前を出されたら注目されるし、後にエピソードトークに使ったりすることもできますよね。お互いに得をすると。

 ただし、そういうのは双方に信頼関係やフォローがあることが前提。そして今回の場合、鈴木さんとあのちゃんにはそれがありませんでしたよね」

 たしかに、鈴木は前述のインスタのストーリーズに《だいぶ後輩なうえ、そんなにからみもない。そんな当たり屋みたいな事されてそれ勝手に放送されてそういうのって面白いの?》と綴ってもいた。

「あのちゃんからすれば、鈴木さんはバラエティタレントだし、上手く受け身で盛り上げてくれるんじゃないか、という甘えもあったのかもしれませんね。ただ、一方で、アーティストや女優の名前を出すことは考えてなかったと思うんです。

 ピー音にしなかったのは番組サイドが絶対に悪いですけれど、あのちゃんはいろいろな番組に出ていますから、もう少し、お互いに裏で連絡し合うなど、フォローできる関係性のタレントの名前を出せればよかったかもですね」

 さらに三杉氏は、「あくまで芸人の話であって、芸能人全体の話ではないですが」として、“嫌いな芸能人”トークの裏側を、こう話す。

「腕のある芸人は、本当に嫌いな相手の名前は出さないんです。わざわざ嫌いな人の知名度を上げたり、話題づくりになるようなことをしたくないんです。だから、本当に嫌いな相手はエピソードトークで名前を出したりせず、徹底的に無視するパターンが多い。ちなみに、近年では、“昔は仲が悪かったけど、今は――”みたいに、美談として話すやり方が増えている印象を受けますね」

 時代は令和。腕のある芸人はともかく、タレントやアーティストの「嫌いな芸能人」トークはもう難しいのだろう。

三杉武(みすぎ・たけし) 芸能評論家
早稲田大学を卒業後、スポーツ紙の記者を経てフリーに転身。豊富な人脈をいかし、芸能評論家として活動している。多くのニュースメディアで芸能を中心にしたニュース解説を行ない、また「AKB48">AKB48選抜総選挙」では“論客”とて約7年間にわたり総選挙を解説してきた。