■大一番になるほど第六感が重要に!

──第六感は、相撲の世界でもありますか?

貴乃花 いわゆる降りてくるとか。そういう不思議な力を、信じられるか、信じられないかで違います。特に、大一番になればなるほど、信じきれなかったら、どこか緊張をして負けちゃう。人間って、緊張するほど足が震えるから、体が全然、動かないんです。

 だから、ふだんから自然の中で第六感を鍛えて、五臓六腑にしみわたるように体を鍛えておくのが、大事かなと思います。

──日本の課題についても議論してきた当対談ですが、我が国の今後は、どうなると思いますか?

養老 そういうことを考えるとダメです。計算だけをして、こうなってほしいなという答えしか出ない。

貴乃花 震災など、大きなことがあれば変わりますか?

養老 日本人は、大地震が起きた後も元に戻しちゃうんですよ。同じビルを、もう1回、建て直しちゃう。変化しないというか、おそらく、日本人は、それしか思いつかないんです。

貴乃花 日本人は早く気づかないといけないなと思います。川が氾濫したら、自然の流れを変えて、以前あった海、川、山をコンクリートで埋めてしまう。それだと余計に水があふれるよね、と。身近にある自然の変化に気づけないほうが恐ろしい。

──そんな中でも穏やかに過ごすためには、何を心がけるべきでしょう。

養老 居心地がよいと感じるものを、大切にすること。それこそ、嫌なやつとは絶対に会わない。

貴乃花 無理したり、気を遣うのも、やめたほうがいいかもしれませんね。

養老 どうしたら自分は居心地がよくなるのか、分かっていない人が多いんです。

貴乃花 前職の私がまさに、それでした。どこかに違和感があるんだけど、それがよく分からなくて、気づけば、呼吸ができなくなってストレスが溜まっていて。

養老 だから、まず、居心地がよい空間を作ってみてはいかがでしょうか。

貴乃花 先生、このたびは、ありがとうございました。

養老 こちらこそ。お会いできて嬉しかったです。長生きすれば、よいことがありますね。

貴乃花光司(たかのはな・こうじ)
1972年8月12日、東京都生まれ。88年、藤島部屋に入門。92年の初場所で、史上最年少の19歳5か月で幕内初優勝。兄・若乃花と「若貴フィーバー」を巻き起こす。94年11月に第65代横綱に昇進。幕内優勝22回。生涯戦歴は794勝で、「平成の大横綱」と呼ばれた。2018年に日本相撲協会を退職し、現在はテレビ、講演会等、幅広く活躍中。

養老孟司(ようろう・たけし) 
1937年、神奈川県鎌倉市生まれ。東京大学医学部卒業。東京大学名誉教授。専攻は解剖学。2003年出版の『バカの壁』は460万部を超えるベストセラーに。