■継続雇用1年目では生活設計の見直しを【CFPが提案】

──定年退職を迎え、継続雇用となった際に大幅に給料が減る人は少なくありません。一方で、住民税は前年の給料を基準に決まります。そのため手取り収入の減少に苦しむ人は少なくありません。継続雇用1年目の人が生活をする上で気をつけるべきポイントはありますか。

 いちばん気をつけたいのは、「年収が下がる」以上に「毎月の手取りが想像以上に減る」ことです。再雇用になると給与は下がりやすい一方、住民税は前年の所得をもとに計算され、給与からの天引きも原則として6月から翌年5月まで続きます。つまり、収入はもう下がっているのに、税金だけは現役時代の感覚で引かれる時期があるわけです。ここで家計を年収ベースの感覚のままにしていると、すぐに苦しくなります。

 大切なのは、家計を「月の手取り」で組み直すことです。住宅ローン、保険料、自動車費、通信費、子どもへの援助など、毎月出ていく固定費を一度全部洗い出して、優先順位をつけること。賞与をあてにした生活設計も、この時期はいったん見直したほうがいいでしょう。

 また、60歳以降に賃金が大きく下がった人は、高年齢雇用継続給付の対象になる可能性があります。まずは「今の手取りで暮らせる家計」へ切り替えつつ、使える制度がないかを確認することが、継続雇用1年目を乗り切る基本だと思います。

──住民税は前年の給料を基準に決まります。そのため継続雇用1年目の人の中には予想外に高額な住民税の支払いに苦労する人も少なくありません。退職前年から準備しておく必要がありますか。

 これは多くの方が見落としがちですが、住民税は「今年の収入」に対してではなく、「前年の所得」に対してかかります。ですから、再雇用で給料が下がっても、翌年すぐ住民税が軽くなるわけではありません。継続雇用1年目が苦しいのは、まさにこのズレがあるからです。

 理想を言えば、退職前年の段階で翌年の住民税負担を見込んで、最後の賞与や退職金の一部を別に確保しておくべきです。すでに再雇用に入っている場合でも、まずは住民税決定通知書を見て、「年間でいくら払うのか」「あと何か月この負担が続くのか」をはっきりさせることが大切です。

 見えない不安は大きいですが、金額と期間が見えるだけで対策は立てやすくなります。そのうえで、支出の見直しは食費などの変動費より、まず固定費から着手するのが効果的です。もし支払いが厳しいと感じたら、そのままにせず早めに自治体へ相談することも大事です。住民税の重さは「想定外」ではなく、退職前から織り込んでおくべき負担だと考えておくと、家計はかなり安定しやすくなります。

【記事後編】では継続雇用となった長村さんが確認するべき給与明細のポイント、毎月の暮らしを楽にするために退職金を使って住宅ローンを繰上返済するべきなのかをCFP・宮岡秀峰氏が解説する。《【記事後編】はこちらから》

※税理士法人アクシア代表社員で、公認会計士・税理士、CFP資格を持つ宮岡秀峰氏

宮岡秀峰(みやおか・しゅうほう)
公認会計士、税理士、行政書士、CFP資格(日本やアメリカなど世界各国・地域で認定されている国際的なファイナンシャル・プランナーの最上位資格)。税理士法人アクシア代表社員、アクシア公認会計士事務所代表。公認会計士として会計・財務の視点から中小企業支援に取り組むほか、相続・事業承継分野にも幅広く携わる。講演や税務相談の実績も豊富で、会計・税務分野の書籍共著、雑誌寄稿も行なっている。

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