■中身は文学作品
「芥川賞や直木賞を狙えるようなマンガ作品を世に送り出す」という野望の下、世に送り出したのが石ノ森章太郎『佐武と市捕物控』、さいとう・たかを『ゴルゴ13』、そして手塚治虫の『きりひと讃歌』など、文学性の高い傑作が生まれた。
言葉は悪いですが、文学崩れの原作者・漫画家・編集者たちが、子供向けメディアだったマンガに不釣り合いなほど、高密度な深い大人の世界観を作品に込めて、高尚なマンガの世界を築き上げていった。
形態はマンガだけど、中身は文学作品。この化け方がマンガをさらに進化させて凄い作品を生み出していく。
そんなマンガにさらにパワーを与えたのが“アニメ化”。
太平洋戦争で海に沈んだ戦艦まで浮かび上がらせて宇宙に飛ばしちゃった『宇宙戦艦ヤマト』。その後のロボット対戦ものの概念を一変させた『機動戦士ガンダム』。一見、ロボットものとか軍艦ものでありながら、物語の中に深い人類愛まで広げた作品が生まれ始めた。
テレビというメディアで放送することで、マンガ雑誌を飛び出したマンガはもの凄い勢いで広がり始めた。『コブラ』『キン肉マン』『キャッツ アイ』『キャプテン翼』……これにテレビ局が乗っかるんですね。スポンサーとともにアニメ人気に乗じて、キャラクターグッズを次々に発売して人気に火をつけるという戦略。これが80年代前半。マンガはアニメ化することによって海外でも火がついた。
こうしたマンガの隆盛、大成功は、いったい何であろうか──。
大東亜戦争、太平洋戦争の敗北こそが、マンガという一大カルチャーの始まりではないだろうか。
日本とアメリカに共通しているのが“大衆社会”であること。
欧州には階級分断があり、見るもの読むものに職業や居住地で大きな分断が存在し、「小衆社会」と言われる。それに対して世界で「大衆社会」として数百万人に向けたモノづくりができたのは2国だけと言われる。アメリカと日本だ。(中略)階級にもリテラシーにもよらず、誰もが楽しめるものを作ったのだ(NHKスペシャル「新ジャポニズム」制作班.『NHKスペシャル「新ジャポニズム」世界はなぜ日本カルチャーに熱狂するのか』. NHK出版, 2025)
本書にはこう書かれていますが、日本がさまざまなジャンルの傑作マンガを生み出せるようになったのも、戦争に負けて大衆社会になったゆえ。大衆が成立しない国ではキャラが出てこない。